モダン・ジャズの知られざる逸話(1)

クリフォード・ブラウン[1


まずはトランペッターの部(1)クリフォード・ブラウンから。

クリフォード・ブラウンというのは、
モダン・ジャズの誇る天才トランペッターです。
相性は「ブラウニー」と言います。

モダン・ジャズでは「天才」と言われるジャズメンは数多くいます。
でも、ここまで完成されていて、
しかも人間的にも非のうちどころがなかったのは、ブラウニーだけです。
天才と呼ばれる人物は、多くの場合、その他面でいろいろと問題がありますからね。

クリフォード・ブラウンの音色は明るいんです。
とても明るい。陰がまったくない。
しかもデビューの頃からそのスタイルは完成されていて、
亡くなるまで変わらなかった。

それに、性格的にも温厚で、とてもいい人だったらしい。
亡くなってしまったからかもしれませんが、
ブラウニーの悪い噂はまったくと言っていいほど聞きません。

ある日、ブラウニーのライヴ中に、
観客の一人が所用で、途中で席を立ったそうです。
それに気づいたブラウニーはその客を追いかけていき、
自分の演奏のどこが気に入らなかったのか、是非教えて欲しいと
頼んだそうです。
結局、自分の演奏のせいで離席したんじゃないことがわかると、
今度は演奏を中断してしまったことを他の客にお詫びし、
いつもの倍の演奏を以って謝罪したとか。

ジャズにありがちな麻薬の噂もなく、
清廉潔白だったブラウニー
でもこういう人ほど早死にしてしまうのが世の常ですよね。
わずか25歳の若さで、自動車事故で亡くなってしまいました。
演奏が終わり、バンドのピアニストとともに車で移動中、
事故を起こして車は大破したのです。

その死より4日前、
モダン・ジャズ史上最高のアルバムが世に出ました。
ソニー・ロリンズ+マックス・ローチの「サキソフォン・コロッサス」
ロリンズはブラウニーとも共演経験があり、
マックス・ローチはそれこそブラウニーの無二の親友・・・
きっとジャズの神様は、
天才トランペッターのあまりにも早すぎる死と引き換えに、
この世紀の名盤を世に送り出すことを許したんでしょうね。

ブラウニーが亡くなって、今年で49年
でもいまだにブラウニーの音に魅せられて、ジャズを聴いている人がいる。
また、ブラウニーの演奏は、本当に数多くのトランペッターに影響を与え続けている。
49年前に亡くなったトランペッターの音が、
いまだに世界中のマニアを感動させ続けている。

ジャズとはこういう音楽です。

ちなみにジャケットは、
ブルーノート・レーベルの「クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム」
天才がブルーノートに残した唯一のリーダー作です。
「イージー・リヴィング」における輝かしいソロは、
この天才のセンスが最大限発揮されている名演です。