モダン・ジャズの知られざる逸話(2)

マイルス・デイヴィス[1


今日はトランペッターの部(2)マイルス・デイヴィス

言わずと知れたモダン・ジャズの「帝王」マイルス・デイヴィス。
説明不要の超大物です。
なぜ、マイルスは「帝王」「超大物」なのでしょう?
これまた説明無用。
演奏の素晴らしさもさることながら、
常に自己の音楽を改革し、ジャズ・シーンを牽引したからですね。

それではマイルスが「帝王」と呼ばれなかったらどうなっていたでしょう?
おそらくモダン・ジャズという音楽は、とっくに滅びていたのではないでしょうか?
滅びぬまでも、ニューヨークだけの、あまりにもローカルな音楽に留まっていたことでしょう。

では、「帝王」マイルスが「帝王」と呼ばれない状況とはどんな状況?
そんなことがありうるのか?
そんなことを成しうる人物がこの世にいるのか?
一人だけいますね。たった一人。マイルスと同じ楽器を持つ天才が。
そう、クリフォード・ブラウンです。
クリフォード・ブラウンが死ななければ、きっとそうなったのです。
詳しく検証して行きましょう。

クリフォード・ブラウンが事故死せず、ずっと生きていたらどうなったでしょうか?
⇒研究熱心なブラウニーのこと、きっと次々と新しいものを創造したことでしょう。

「トランペッター」マイルス・デイヴィスはブラウニーと勝負して勝てたでしょうか?
⇒総合力ならともかく、「トランペッター」としてはブラウニーのほうが上でしょう。

勝負しても勝てない相手に対して、マイルスはどうしたでしょうか?
⇒常にトップを目指すマイルスです。
 努力しても到底勝てない相手と無意味に戦うことを良しとせず、
 ジャズに見切りをつけて、ボクサーにでもなったことが予想されます。
 あるいはそれ以前に、ジャンキーから抜け出せず、廃人になったかもしれません。

マイルスがいないとどうなるか?
⇒モードが生まれません。

モードが生まれないと、どうなるか?
⇒ジョン・コルトレーンは、永遠にイモ・テナーのままです。

コルトレーンがイモのままだとどうなるか?
⇒60年代に巻き起こったジャズ旋風、これが無いことになります。
 もちろん、マイルス・デイヴィスの最強クィンテットも存在していませんね。

60年代のジャズが無いとどうなるか?
⇒変革されないジャズはいつしか古くなり、ローカル・ミュージックになってしまったでしょう。
 あ、もちろんマイルスがいないので、フュージョンもこの世に存在しないことになります。
 ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ジョー・ザヴィヌル、チック・コリア、
 キース・ジャレット、ジャコ・パストリアス、このへんの人はすべて登場しません。
 多分、その後のクロス・オーバー、ディスコ・ミュージック、ラップ、、、
 すべて生まれてはいないでしょう。

では、クリフォード・ブラウンは長生きして何をしたか?
おそらく、新しい音楽を創造はしたでしょうが、
マイルスがやったような、ジャズを根底から揺り動かすような大胆な転換は
しなかったのではないでしょうか?そこまで野心家ではないです。
それよりも、自分のライヴを聴きに来てくれた人に対して、
全力投球したことでしょう。ブラウニーとはそういう人です。

一人のトランペッターの死が、こんなにも多くの事象に影響するのです。
歴史とは面白いものですね。

ちなみにジャケットは、
コロンビア・レーベルの「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」
帝王のコロンビア移籍第一作目です。
トランペットを片手にじっと未来を見つめるマイルスの姿にシビレます。