モダン・ジャズの知られざる逸話(12)

ケニー・バレル[1


今日はギタリストの部(12)ケニー・バレル

モダン・ジャズを発売したレコード会社は数あれど、
本当に素晴らしいアルバムを連発したのは限られています。
世に三大レーベルとして称えられている会社は、
マニアにとっては言わずもがな、@ブルーノート Aプレスティッジ Bリヴァーサイド 

この3レーベルはそれぞれ個性があり、
有名ジャズメンも多数、名盤を残しており、
どれがいいかは個人の感性の問題。言わば好き嫌いの問題です。
でも、ことジャケットに限れば最高のレーベルは万人の意見は一致します。
一声、「ブルーノート」

ブルーノートのジャケットは専属のカメラマンがいて、
わざとブルーな色合いのものを多く発表しました。
カラーのジャケットもあるにはありますが、数が限られていて、
ジミー・スミスやアート・ブレイキー等、
ブルーノート・レーベルに多大な貢献をしたジャズメンに限られています。
その大半がくすんだブルーのジャケット。

カメラマンによる写真をジャケットにしたものが大半であるブルーノートにあって、
ほんの数枚、イラストによるものがあります。
ほぼ初めてのイラストによるジャケットが今回のケニー・バレル盤。
なぜかこの時、プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、
ジョニー・グリフィンの写真をジャケットにせずに、
あるアーティストにイラストの作成を依頼したのです。

そのアーティストは、才能と意欲、向上心に満ち溢れておりましたが、
まだまだ無名で、文字通り「世に這う日々」を続けておりました。
仕事もなく、収入もなく、そのぶん時間だけはありました。
アルフレッド・ライオンからイラストを頼まれた、この弱冠28歳の若者は、
ギタリストのアルバムだということを聴き、
15分でさらさらと「ギターを弾く黒人」のイラストを描き上げました。

その後、この無名アーティストは、1956年のこのジャケットを皮切りに、
ブルーノート・レーベルに数枚のイラスト・ジャケットを残します。
1957年のジョニー・グリフィン盤 「ポロシャツ姿でサックスを持つ男」
1958年のケニー・バレル盤 「ハイヒールで寝そべる長髪の女性」

そして、数年後の1962年、
彼はシルクスクリーン・ペインティングの作品を制作し、NYのスチーブル画廊で個展を開催。
これが大評判となり、一躍世界的アーティストとなりました。
さらにその後、1965年
ペンシルヴェニアでの個展ではとんでもない入場者数を記録し、名声が決定的に。。。
その後、59歳で亡くなるまで、
残念ながら、二度とブルーノートのジャケットにイラストを残すことはありませんでした。

ブルーノートのプロデューサー、アルフレッド・ライオンは、
おそらく世界で最初に、その若者の才能を見抜いたのでしょう。
ジャズメンのみならず、美術家にもその眼力は発揮されていたのです。
恐るべきはアルフレッド・ライオンの慧眼。

そのアーティストですが、
無名時代に描いたそのジャケットの右下に、自分の署名を控えめに小さく入れています。
その署名、もうお判りですよね。

「Andy Warhol」