モダン・ジャズの知られざる逸話(14)

バド・パウエル[1


今日はピアニストの部(14)バド・パウエル

たぶんモダン・ジャズ史上、最も影響力の強かったピアニストがバド・パウエルです。
疾風怒濤とも言うべきスピード感溢れるアップ・テンポのソロと、
果てしなく可燐でこぼれるようなロマンティシズムを感じさせるバラード
アル中やクスリで、何度も入退院を繰り返したその半生
まさにモダン・ジャズそのもののような人生を送った方です。

さて、バド・パウエルの師匠ですが、
ご存知、セロニアス・モンクなんですね。
そうです。帝王マイルスと喧嘩した、あの奇人変人です。
しかし、この師弟
なぜか弟子のほうが先に認められてしまいました。
バド・パウエルが世に出たのは大体1949年くらい。
モンクが遅れ馳せながら認められたのは1950年代半ばですから、
ずいぶんと弟子のほうが早く出世したことになります。
まあ、間違っても、そんなことでくよくよするモンクではありませんが・・・

当時、ニューヨークのジャズ・クラブに出演するには、
クラブ・カードのような許可証が必要だったのですが、
ある日、この師弟、
揃いも揃って同時に没収されてしまったんですね。
二人が乗っていた車から麻薬が発見されたのです。

麻薬はバド・パウエルのものでしたが、
自分が口を開いてパウエルに不利になることを恐れたモンクは黙秘権を使い、
結局両者とも逮捕され、カードは没収されてしまいました。
このカードが無いとクラブに出演できません。
お仕事ができません。ご飯が食べられません。
当時は、今以上に黒人が差別されていた時代。
「帝王」マイルスでさえ、演奏の合間にクラブの前に立って一服していたら、
「こんなところに立っちゃいかん!」と警官に注意され、
理由を聞いた途端、警棒で頭をぶんなぐられてカードを没収されたとか。
まったくわからん国、わからん時代ですね。

さて、カードを没収されたモンクとパウエル師弟。
普通は慌てふためくところですが、そこは奇人モンクのこと、
ある女性パトロンのところに転がり込んで、仕事もせず優雅な生活を送ったそうです。
パウエルはパウエルで、ここぞとばかりに酒びたりですね。
しかし弟子を売らなかったモンクの男気はミュージシャン仲間に伝わり、
モンクは大いに男を上げたとのことです。
これまた当のモンクはまったく関係ない!
男を上げようが下げようが、まったく我関せずの人でした。

というように、師匠モンクと弟子パウエル、
かなり太い絆で結ばれていたようです。
ある時、二人連れ立って入ったクラブでの出来事
席に着くやいなや、バド・パウエルはテーブル・クロスのかかったテーブルに、
いきなり両足を投げ出して座ったそうです。
さすがのボーイもあきれ果て、何度も注意しますが、
パウエル、一向に聞く耳持ちません。
業を煮やしたボーイが、このマナー欠如野郎をつまみ出そうとすると、
モンクが一喝!
「この男は天才なんだ。放っておけ!」
(モンクさん。あなただって、充分天才ですよ!)

ということで、ジャケットは、
有名なブルーノート盤「アメイジング・バド・パウエル第5集」
A面1曲目には超ヒット曲「クレオパトラの夢」
僭越ながら、私のブログ・タイトルは、この曲からいただきました。