モダン・ジャズの知られざる逸話(24)

ソニー・ロリンズ[3


今日はテナー・サックスの部(24)ソニー・ロリンズ

前回は、セロニアス・モンクがソロの出を間違え、
まだ自分の番にも関わらず、ジョン・コルトレーンにソロの出を促してしまうという
間抜けな勘違いをお話いたしました。
今回はその逆。
まだ自分の番が来てないのにも関わらず、
いきなり演奏を始めてしまった困った人のお話です。

ところはブルーノートのスタジオ
作成アルバムは「ソニー・ロリンズ第2集」
参加ジャズメンは、とんでもないメンツを揃えており、
リーダーのソニー・ロリンズのほか、
トロンボーンのJ.J.ジョンソン、
ピアノにはホレス・シルヴァーとセロニアス・モンク
ベースにはマイルス・コンボからポール・チェンバース
ドラムには御大アート・ブレイキー
すっごいですねえ、これ
一人だけでもアルバムを余裕で作れるジャズメンが6人も!
さて、このセッションにて事件は起こります。

モダン・ジャズの曲の構成は、
各人がソロを順番に回すというものですが、
曲も佳境に入ったころ、
4小節程度で、各楽器とドラムが掛け合いを行なう部分があります。
専門用語で「4バース・チェンジ」と言います。
ここで、リーダーのソニー・ロリンズは、
まだアート・ブレイキーが一生懸命ドラムを叩いているのに、
いきなりサックスを吹き出しました。
そう、前回のモンク同様、小節数を数え間違えたんです。
しかも懲りずに同じ曲で2回も!

1回目のミスにおけるロリンズは、
心の動揺を押し隠すかのように、すぐさま微妙に変えたメロディを吹き、
何事もなかったかのようにリカバリするとともに、
その問題解決能力の高さをさりげなくアピールいたしました。
しかしその数秒後、何を思ったか2回目のミス!

さすがにやばいと思ったのか、
ロリンズは何とか誤魔化そうというのが見え見えのメロディ。
まるで朝の朝礼中に思い出し笑いをしてしまい、
何とか咳払いで誤魔化した奴のようです。
しかし当然のことながら、全員にバレています。

ちなみにこの曲についてもNGとはならず。
おそらく人のパートに踏み込んでまで吹きまくってしまったロリンズ
相当ノリにノッていたことが想像され、
取り直しではここまで熱のこもった名演奏にはならなかったでしょう。

このアルバムのピアニストはホレス・シルヴァーですが、
曲によってはセロニアス・モンクも登場してくれます。
ソニー・ロリンズのバッキングはセロニアス・モンク、
J.J.ジョンソンのバッキングはホレス・シルヴァーと、
面白い役割分担をしているのですが、
その際、何と仲良く同じ椅子に一緒に座って、連弾でピアノを弾いたとのこと。
大スター二人を同じ椅子に座らせて演奏させてしまうブルーノートというレーベルも凄いですが、
それにあっさりと二人が従うというのは、
プロデューサー、アルフレッド・ライオンの人徳以外の何者でもありません。
しかも、その一人がセロニアス・モンクというのが、何とも可笑しい!
本当にセロニアス・モンクという人は、笑わせてくれますね。
微笑ましいエピソードです。

ということでジャケットは問題のアルバム
「ソニー・ロリンズ 第2集」
サックスを抱え、おしゃれに煙草をくわえながら、
未来をじっと見つめるロリンズが素敵です。
その後、何かのフュージョン・アルバムのジャケットにもパクられた
いかにもブルーノートと言った色合いの秀作です。