端山忠彦の実践SS学
第1回
「変化」を起こせば油外は伸びる。
セルフサービスが普及するのに伴ってガソリンのマージンが1リットル当たり10円を切る販売環境になってきたサービス・ステーション(以下SSと呼ぶ)業界では、ここ数年、「油外収益の向上」が最重要テーマになってきています。
元売り各社も生き残り策の一つとしてこれを代理店・特約店の経営指導の中心に据えていますし、多くの店主の方は従業員に「自分の給料分は油外で稼ごう」と語りかけて叱咤激励しておられます。
しかし、多い少ないは別にして、これまでも一所懸命の努力をしてきており、更なる努力をして増収を図ることの難しさを痛感しておられるのではないでしょうか。現在の厳しい経営環境がすぐに好転するとは考えにくいため、何とか燃料以外で増収を図らなければと、あれこれ試行錯誤を重ねておられる現状だと思います。
そんなことから、マネージャーを洗車・オイル・タイヤ・車検などの勉強会に出席させて成功事例をSSに持ち帰らせ、その手法を実行に移しているSSも多くあります。しかし、結果が出るところまでやり切れていないのではないでしょうか。洗車やオープンボンネットの声掛けなどの基本活動もヒット率が低いために長続きせず、いつの間にか尻切れトンボになってしまう。収益は向上するどころか、最近の不況のあおりもあって減少気味に推移している。こんなところが油外増販活動の実情だと、私は分析しています。
では、なぜこんな状況になるのかを考えてみましょう。
先ずは店主の姿勢です。自ら油外拡大のために何をしたかが問われます。
「このままじゃ赤字だ、やって行けない、皆の給料も払えなくなる」といった、消極的発言に終始していないでしょうか。店頭での声掛け状況などを毎日チェックして従業員の人達を激励しているでしょうか。自らが率先して手本を示しているでしょうか。
第二はマネージャーの働きです。「受け身の動き」に終始してはいないでしょうか。現場の責任者として自ら考え工夫することを忘れて、店主の言うことを漫然とやっているだけというマネージャーが数多く見受けられます。なぜそうなのかと言うとこうです。人間は何とかやれている時は「保守的」になり、今までやって来ていることを変えてまで新しいことをやるのを嫌うからです。だから、どうしてもこれまでの延長線上で勝負しようとします。そのために、新しいことをやろうと決めても「三日坊主」という言葉があるように長続きせず、結果が出ない状態を繰り返すことになります。
第三は顧客教育というか、お客さんとのコミュニケーションです。多くのお客さんは油外商品をどこで買うかを大体決めています。他のお店で買うことにしているお客さんに急に声掛けをして勧めても、そのお客さんがSSで買う気になるには何かきっかけがいります。それが接客サービスなのか、価格なのか、または専門性なのか……。お客さん毎に違うでしょうが、お客さんとのコミュニケーションを深めSSの持てる魅力を感じ理解していただくということが、このキッカケ作りには大変重要な要因になります。このことを具体化したアプローチをどれだけ展開して来たかに油外顧客の数は比例しています。
つまり、店主が先頭に立ち、マネージャーが自発的的に動き、快適走行を中心においたお客さんとのコミュニケーションを深めてゆけば油外商品は売れます。これをどの程度徹底してやってゆけるかで販売高が決まってきます。自明の理であるはずのこのことを、今まで以上に徹底するのは難しいから、具体的なやり方が分からないからと、いつまでも同じことをしているし、同じことをしているから同じ結果しか出てこないのです。
なぜそうなってしまうのでしょう?
それは、マネージャーの考え方が変わらないからです。マネージャーの行動は、彼の人生観・販売哲学・経験・知識などの上に成り立っています。それゆえ、考え方に変化が起こらない限り彼の行動が変わることはあり得ないのです。だから、大きな会社では責任者の人事異動で事業所内に変化を起こし、抱えている問題の解決を図るようにしています。SSの場合、マネージャーを替えずに活動の内容を変えようとするわけですから大変です。
では、どうすればよいのか……。
結論から言えば、「出来なければクビだ」と引導を渡し、マネージャーの「退路を断つ」ことだろうと考えます。そうすると彼は「必死」にならざるを得ません。必死になれば従業員の動かし方・お客さんへのアプローチ方法など、店主が指示したことをこれまで以上の真剣さで実行するようになるでしょう。
そうすると、SS内に「変化」が現れ、それがお客さんにも伝わって、業績にも向上の兆しが出てきます。こうなればしめたものです。SSの勝ち残りのシナリオが見えてきます。マネージャーは苦境を乗り越えて「変化を起こすこと」を習得します。飛躍的な成長を遂げると同時に、これから迎える本格的なセルフ時代を乗り切るノウハウを身につけた、有能な、任せることの出来る人財に変身していることでしょう。
そうです。油外収益の拡大は、店主の皆さんの現状を変えてやろうとの「不退転の決意」から始まります。新しい行動の継続が「変化」を起こします。多くのSSでの「自己改革」への挑戦と業績の向上を期待しています。
【NICHIBO
SS MAGAZINE『SSファミリー』2003夏号に掲載】】
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