端山忠彦の実践SS学



 フルサービスSS 勝ち残り経営への第一章








 前号の「勝ち残り経営への序章」では、勝ち残りに求められる経営者の心構えや姿勢などにスポットを当てて考察しました。常に変化していく市場環境に柔軟にかつ「客観的」な視点に立って対応することが重要だと申し上げました。
 そこで今回は次の人的経営資源、つまり社員・従業員の人達の活性化のポイントについてご一緒に考えて参りたいと思います。
 その前に、夏季号の「序章」について読者諸兄より多くの興味ある感想をいただきましたのでそれをご紹介し、そこから話を進めていくことに致します。


 経営者レベルの人達の感想が総じて「あまり感動しなかった」であった一方で、幹部社員を含め従業員の人達からのそれは「その通りだ。大いに共感した」でありました。
「この正反対の評価は何を意味するのか?」と考えると、立場の違いから来る当然の反応の違いではありますが、大きく業績を飛躍させることが出来ない原因の所在をきわめて明確に示唆しているように私は思いました。
 業績を上向かせるという観点から見ると、お互いの「思いの不一致」があるが故に、店頭での活動の徹底度が甘くなるのだろうと推測されます。この不一致が業績面に影響することは当然であります。


 経営者と従業員の業務範囲を円で描いてみますと営業戦略・施策という部分は重なります。その部分の考え方・実施力においてお互いの理解と信頼度にズレがあるとするなら、残念ながら多くのエネルギーをロスしていると言わざるを得ません。 経営者の人達のタイプを人材活用の仕方という観点から分類すると、大きく二つに別けることが出来るように思います。

・「絶対的な権限と高い能力でグイグイ引っ張っていく」タイプ
・「従業員との二人三脚で競争力を向上させていく」タイプ

 つまり「お前達は俺の指示通りに実行すればいいんだ」というスタイルと「お客様のニーズをしっかりつかむ具体的な店頭活動プログラムを皆で考えて実行して行こう」というスタイルの違いでしょう。それぞれに長所短所があるため、一概に優劣を決めることは出来ませんし、お店がどのような経営環境にあるのか、経営者の手腕と従業員の実力レベルによっても評価が別れます。市場環境によっても求められる経営者のあり方も変わってくるでしょう。

 また、今SS業界はどのような時代に遭遇しているのかと考えますと、フルサービスからセルフサービスへの変革期にあると位置づけることが出来ます。多くのお店が「燃料油の低マージン」時代をどうやって生き抜いていくか、現在と近未来の市場環境にマッチした経営モデルを模索しておられることと思います。いつの時代でも経営者と従業員が持てる力を存分に発揮することがベストですが、変革期ほどその重要性が増してくるのはご承知の通りです。
 つまり、両者が互いにその能力・実力のほどを互いに知り得ているとするなら、お店の運営力は相乗的に向上し、燃料油販売は言うに及ばず油外商品販売においても卓越した業績を実現することは間違いありません。


「社員・従業員の業務能力の向上が最大の経営課題だ」

 どの経営者にお聞きしてもそう考えておられます。しかし、冒頭で申し上げた通り、同じものを読んでいても受け止め方と反応が異なります。それは単に立場の違いから来るものでしょうか?
 また、多くの店主の方は「自分が知っている従業員の実力からするともっと内容のある仕事が出来るはずだ」と思っておられます。にもかかわらず現実は、期待を下回る業績に終始しているところがほとんどです。従業員の方も「店主からもっと的確な指示命令があれば……」と期待していると推察できます。
 この小さな「ミスマッチ」が店頭の勢いを弱め、業績を飛躍的に拡大する上で大きな阻害要因の一つになっています。

 店主は、少なくとも社員・従業員の――潜在するものを含め――能力を正しく把握し、彼らを的確に動かすことによって高い業績を上げつつ彼らの能力の更なる向上を図るという、善の好循環を創り出して行くのが最大の経営テーマであることはご承知の通りです。
 言葉を換えて申し上げるなら、店主自らが従業員の人達に何を教えてきたのか、彼らをどこまで理解しているのかが問われている。それが重要な経営テーマです。ひょっとすると、彼らの業務能力が「すでに限界に達している」にもかかわらず、「旧態依然」のやり方でお店が運営されているかも知れません。


 このテーマがどの程度は足されているかを確認する一つの方法として、私の研究会では比較的簡単な二種類のテストを使ってSS従業員の人達の店頭業務能力を調査しております。その結果は多分、店主の人達にとっては驚くべきものです。
 その内容についてここで平均的なことを申し上げても個々のお店にとってあまり意味はありません。添付のテスト様式(ここでは省略)を使って店主自らが従業員一人ひとりについて業務能力のレベルを確認し把握していただくことをお勧めします。必ずや店主の皆さんが捜し求めておられる業績が大きく伸びない「真の理由と原因」を発見されることでしょう。そうすれば自ずと改善策が明確になり、「勝ち残り経営」への確かな第一歩を踏み出されることと期待する次第です。


 次回は、このテスト結果を踏まえて、「勝ち残り経営への第二章」として「真の顧客ニーズ」について言及して行きたいと考えています。ご期待ください。

       【NICHIBO SS MAGAZINE『SSファミリー』2004秋号に掲載】