05年4月度
   実践SSセミナー講義ノート

 「試練に打ち勝つケース・スタディ」






  進め方

 まず参加者全員が、現在取り組んでいる(自分にとって)困難な仕事について、その実施状況を事前に、「自己観察シート」、「ケース・スタディ資料」、「現在取り組んでいる具体的なケース」に記入して上司に提出してください。ただし記入にあたっては、完全なものにする必要はありません。これらはセミナーにおいて、「実施可能なクリティカル・パス」を探り、具体的な業務課題を私と一緒に作る資料となります。それを受けて私は、皆さんから提出された資料を一冊のブックレットにして、セミナー参加者全員に配布します。これがケース・スタディのテキストになります。

 さて、セミナーで実際にケース・スタディを進めるわけですが、それはこのような手順になります。
  1)現実の問題点を把握する。
  2)“隠れている”前進しない原因を探る。
  3)「クリティカル・パス」を明確にする。
  4)具体的な実施策をまとめる。

 次に、今回のセミナーが終ったら、ただちに職場での「試練に打ち勝つ具体策」の実行をします。その要点は次の3点です。
 1)「クリティカル・パス・スタディ」で明確になった具体策を着実に実施する。
 2)目標の実現に必死になって取り組む。
 しかし大抵は「これまで敗れなかった壁」にぶち当たります。ですから、
 3)壁にぶち当たったら必ず上司に相談する。
 このことを忘れないでください。また、上司の方は、常に関心を持って実行者を観察し、適切なエンパワーメントを行ってください。

 そして、次回のセミナーです。三か月間取り組んだ各人の、結果、実施状況、感想などを「5分間」で発表します。

 講師の私は、いつでもセミナー参加者の質問・アドバイス要請に応えます。一番良くないのは、「自分がやると決めたこと」をアドバイスを求めず助けも請わずに「ギブアップ」することです。昨日まで皆が頑張っても破れなかった壁は、そう簡単に破れません。会社が期待していることは、今まで出来なかったことを“ひとつずつ”やれるようになっていくことなのです。努力の成果として身に着いたその力は、「会社の財産」となって発展の基盤になりますが、同時に「社員個人の財産」となります。

                                     実践SS研究会 端山忠彦




1.自己観察シート
 下記について具体的に、あなたの「気持ち・感じ」を書いてください。

〇会社/上司の自分に対する期待。
   (業績、活動、業務能力について、自分の思っていることと実際の状況)
〇部下の自分に対する期待。
  (業績、活動、業務能力について、自分の思っていることと実際の状況)
〇自分の部下に対する期待。
  (業績、活動、業務能力について、自分の思っていることと実際の状況)
〇自分が会社に期待していること。


2.ケース・スタディ資料
 現在取り組んでいる業務について書いてください。


〇現在あなたに課せられている目標・仕事はどのようなことですか。
〇その目標・仕事に対して、これまであなたは具体的にどんなことをしてきましたか。
〇これまでの過程で「うまく出来たこと」「残念ながらうまく行かなかったこと」はどんなことですか。また、「なぜうまく出来たと思うか」「なぜうまく行かなかったと思うか」も具体的に書いてください。


3.現在取り組んでいる具体的なケース
 決して完全なことを書こうとしないでください。これを叩き台に、セミナーで考えてゆきます。

〇自分にとっての、現在達成しなければならない目標、乗り越えなければならない試練や課題、もしくはやりたい仕事。
〇それを達成するためにやらなければならない具体的な課題・テーマ。
〇この目標を達成するために、“絶対に通過、やり遂げなくてはならない仕事”。




【参考資料】


☆「試練に打ち勝つケース・スタディ」に有効な考え方

1.コーズ・アナリシス(Cause Analysis)

―良いことも悪いことも、ある出来事が起こるときには、必ず原因・理由などがある。

―しかし、それらは「表面的」なもの、「水面下に隠れている」もの、「遠く彼方にある」ものなど色々であるが、「なぜ、なぜ……」と問い詰めていくと、最後に「真の原因、理由、問題点」に行き当たる。ここが「原因の分析」である。

―「本当の原因、問題点」が分かると、行動せずにはおれなくなる。


2.クリティカル・パス(Critical Path)

―我々が仕事で目標の達成や問題を解決に取り組まなければならないとき、いくつかの業務が課題・テーマとして上がってくる。

―それらの課題・テーマの中で、「これをやり遂げたらその目標の80%以上は達成できる」という「最も重要な業務テーマ、課題、取り組み」がある。これを「絶対に通り抜けなければならない経路=クリティカル・バス」という。


3.クリティカル・マス(Critical Mass)

―会社・SS・お店などが発展していく過程で、これらの組織が持てる「人、物、金」の数や量や規模があるレベルに達したときに、一気に成長・向上・繁盛していく。その「上昇分岐点となる、数・量・規模」をクリティカル・マスという。

―例えば、資本金が1億円から30億円になる。「投資する力、競争する力、優秀な社員を雇い入れる力」などが大きくなり、会社が一気に数段階発展していく状況が生まれる。

―例えば、A会社とB会社が合併する。商売の規模は2〜3倍になるが、従業員数とか店舗数で重複しているところを削減すると、効率が一気に上がり、会社の業績が更に向上し続ける状態が生まれてくる。

―例えば、SS・お店で優秀な従業員の数が半分以上を占めるようになる。お客さんから「あの店の従業員は皆プロだから何でも任せられる」という信用と信頼が出来上がって、一気に業績が向上するし、一般の従業員の能力も一気に高まる状態が生まれる。



☆業務遂行に作用する「相反する二つの力」

―推進力…表面上に現われた「目標、指示、命令、活動計画、リーダー」。
    …現状を変革させる方向に推進する力。


―阻害力…変革に抵抗して、現状を守ろうとする力(規制力)。
    …水面下にある「混乱・不一致、不信、秘密、共謀、怠け心」など集団と個人の感情。


☆業務の遂行度を高める「エンパワーメント(推し進める力)」

―ブランコで、背中を押してやると振りが一層大きくなる。それがエンパワーメント。

―「自律」と「指示された自律」の違いを知る。
 従業員は仕事において、「自分の思うようにやってみたい」し、「上司から指示もして欲しい」と思っている。上司の「従業員の背中を押してやる指示」が業務の達成度を高める。

―また、この「背中を押すエンパワーメント(指示であり支持)」は、従業員の「自発性と創意工夫」を促進する。エンパワーメントのない「任せるという指示」は、無責任な会社・上司の責任放棄であり、業務怠慢でもある。

―このエンパワーメントを「絶えず働かせる」ことによって、集団・会社は継続的な発展を維持できる。



☆「変化」に対する抵抗要因と促進要因

―集団も個人も「変化する」ことが苦手。何がそうさせるのか、それはどんな時か。

 a)変化の目的、目標が「不明確」なとき。
 b)変化への計画に「参加が不十分」なとき。
 c)変化について「コミュニケーション不足」のとき。
 d)変化が「個人的な」損得やパフォーマンス(振る舞い)の上に立っているとき。
 e)変化をしても十分に「報われない」「やり甲斐がない」と思うとき。
 f)変化に着地点未知(先がわからない)や失敗の「恐れ」があるとき。

 g)変化の推進者に対して「信頼が持てない」とき。
 h)現状に満足しているとき。
 i)変化が「急激過ぎる」とき。

―集団や個人に「変化を起こさせる」要因とその度合い。
  (震度数が大きいほど変化が起こる)

     変化を起こす要因         変化の度合い     
   知識(商品・情報・原則)    震度1(弱い)
   技術(作業・メカ・アイデア)  震度3(そんなに強くない)
   姿勢・態度(業務取り組み)   震度5(かなり強い)
   価値観(感)          震度7以上(大変強い)



☆GM(ゼネラルモータース)が誤った戦略〜成功がもたらす失敗より〜

【1985年に北米で40%を超えていたマーケット・シェアが2004年には27%まで降下し、2005年1〜3月期は赤字に転落。販売回復の兆しも見えない状況】

―GMは何を間違えたのか、彼らの過去の戦略を検証すると、

 …我々の目的は儲けることであって、車を作ることではない。
 …エネルギーはいつでも安く、豊富である。
 …GMは率先して新技術を導入する必要はない。他社の様子を見て改良・真似をすればよい。
 …消費者は見栄の象徴として車を買う。耐久性や品質より毎年モデルチェンジする方が大切。
 …外国車は品質で劣っている。彼らが米国で30%以上のシェアを占めることはない。

 教 訓
―我々は、会社は何によって利益を上げ、社員・従業員は何によって給料を得ているかをよく考えなくてはならない。我々の使命はなにか。その使命を果たすことによって「糧」を得ている。この価値観を常に肝に銘じて業務に取り組むことが、仕事の第一歩である。

―GMの誤りは、「丈夫で安全な車、効率の良い車、環境にやさしいクルマ、そして快適なクルマを造る使命」を忘れて、「金儲け」に目標を置いたところにある。



                              実践SS研究会 2005年4月度セミナーより