ジェイズ・マネジメントセミナー・テキスト
SS業界が直面する課題
と
勝ち残り政策ポイント
元売戦略の底辺にあるもの
1.石油資源は不足気味で推移する。
◆元売会社にとって有利な「売り手市場」が続く一方で、小売サイドでは「熾烈な生き残り競
争」が繰り広げられる。
2.日本のSS市場は、「セルフサービスSS10,000か所」に向かって、業態変貌へのリ
ストラクチャリングを繰り返していく。
◆10,000か所のほとんどが新しい土地に配置され、その運営者が現在の代理店や特約店
である保証はない。
3.元売会社の代理店や特約店に対する評価基準は、「財務内容」と「取り組む意欲・姿勢」に
置かれている。
◆元売会社は現在、代理店や特約店の収益性悪化・業績低迷から、売掛金や融資金の不良債権
化防止に最大の関心を払っている。
◆元売会社が系列代理店や特約店の育成と支援を決める最大のポイントは経営姿勢である。
◆SSビジネスの将来に、「可能性と有望性を見出している」経営者が積極的にSS部門に
投資をしているのに対して、「不安を感じている」経営者の多くが投 資はおろか経営自体が
消極的になっている。この経営姿勢の差が大きく二極分化 を促進しており、このことが元売
直轄販売会社を拡大させるシナリオの背景にある。SSビジネスの将来に「展望」を見出せな
い多くの経営者にとっては辛い環境である。
4.顧客志向主義の主体者交代が行われる。
◆元売会社の販売政策は、エンドユーザーの「元売としての獲得」に力点が置かれ、その
一環として「優秀な」代理店や特約店への支援育成とブランド色強化が 推進される。
代理店・特約店にとっての、「勝ち残る」ための課題
1.SS業界で明らかになってきたこと。
◆セルフサービスSSでのガソリン販売シェアが50%を超える状況が視野に入ってきた。
◆顧客のフルサービスSS離れが鮮明になってきた。
…セルフSSとの販売価格差拡大とともに市場での価格主導権がセルフSSへ移行した。
…フルSSでのガソリン販売量と油外販売の減少傾向に歯止めがかからない。
…フルSSの戦略転換が為されず、従業員育成の遅れに諦めの空気が充満している。
◆元売会社が差別的な政策を推進しようとしている。
…大手の代理店や特約店、出資販売会社への「優遇仕切り制度」の適用。その結果として
の出資販売会社ネットワークの拡大。
◆系列外卸売り数量が拡大される。
…現行マーケット・シェアを維持するための基準販売量の減少を補填すると同時に債権回
収リスクを回避する目的。
2.SS経営にとっての二大戦略。
1)ハードウェア戦略…「設備、施設」と「価格」を武器に攻める。
◆幹線道路に面した大型セルフ、併設業態を持つ複合セルフ、低人件費によるローコスト
運営。
2)ヒューマンウェア戦略…従業員の「技術力」を通じて「信頼と情報」を武器に攻める。
◆地域密着「フルと小型セルフ」、人的付加価値の創造、<深い>顧客志向、<真の>顧
客ニーズの掘り起こし。
※留意点「顧客ニーズと店頭活動のミスマッチ」
◆現在SSが売ろうとしているのは「ニーズ顕在化商品」、お客さんが求めているのは「ニ
ーズ(安全、故障なし、寿命延長、快適、経済的)潜在化商品」。だからこそ、プロのアドバイス
が必要なのである。
◆お客さんがオープン・ボンネットしてくれない理由を把握し切れず、売れない理由を「外」
に置いている。また、お客さんがSSの能力を見抜いていることに気づいていない。
従業員育成の要諦
1.なぜ従業員が育たないのか?
1)従業員側の問題点
◆甘やかされて育ってきている、躾けられていない、ハングリーではない、目標が定まっ
ていない。
◆他力本願的な精神構造(強い依頼心・依存心)に溺れている。
2)経営者側の問題点は下記の状態の恒常化
◆指導・訓練が停滞しており、怒るのではなく「優しく叱る」習慣が失われている。
◆「結果志向」へ傾斜して、「プロセス(過程)を見てやる」ゆとりを失っている。
◆業績不振の「真の原因追究」をせず、従業員の業務能力改善を「あきらめ」ている。
3)従業員の業務能力不足の主な原因。
◆不十分な商品知識、作業技術。その原因は、「訓練・研修への意識」や「学ぶ意欲と吸
収力」の低さと「出来ない自分を恥ずかしいと思わない」精神性。
2.従業員育成の骨格―「SS道―繁栄の五条の勧め」
<儒教五条の徳「仁」「義」「礼」「智」「信」>
「智」…車についてのメカの知識・商品知識・作業技術の習得。
「仁」…車の「安全、故障、寿命、快適、経済性」についての卓越したアドバイスの展開。
「義」…高品質な品揃え、明朗で信頼できる価格の設定、公平なサービスの提供。
「礼」…活気のある店頭サービスの展開、キレイなトイレ。
「信」…これらの「徳」のあるSSに「お客様の信頼・信用」が生まれる。
3.「SS道―実践プログラム」
◆毎日、自分自身に「自信」が持てるよう、下記項目を実施して自己鍛錬する。そして、そ
の実施状況を採点記録する。
…「親切な行動」「正しい対応」「礼儀正しい動き」「勉強と工夫」「勇気ある行動」。
◆会社・組織にあっては「精神的なバックボーン」、社風作りのベースとなる。
4)リーダーが心がけるべきこと。
◆従業員・部下は、業績の向上よりも「自分の能力向上と成長」に最大の関心がある。
◆従業員・部下は、「理屈や説教などの言葉」だけでは動かない。
◆マネージャーが、部長が、社長が「あそこまでやるか」という「感動」が、部下を行動さ
せる「原動力」になる。
◆「正しい理論+感動」が行動に駆り立てる。
◆上司の「率先垂範」が「感動の出発点」となる。
「試練に打ち勝つケース・スタディ」に有効な考え方
1.コーズ・アナリシス(Cause Analysis)
◆良いことも悪いことも、ある出来事が起こるときには、必ず原因・理由などがある。
◆しかし、それらは「表面的」なもの、「水面下に隠れている」もの、「遠く彼方にある」
ものなど色々であるが、「なぜ、なぜ……」と問い詰めていくと、最後に「真の原因、理由
、問題点」に行き当たる。
◆ここが「原因の分析」である。
◆「本当の原因、問題点」が分かると、行動せずにはおれなくなる。
2.クリティカル・パス(Critical Path)
◆我々が仕事で目標の達成や問題を解決に取り組まなければならないとき、いくつかの業務
が課題・テーマとして上がってくる。
◆それらの課題・テーマの中で、「これをやり遂げたらその目標の80%以上は達成できる」
という「最も重要な業務テーマ、課題、取り組み」がある。これを「絶対に通り抜けなけれ
ばならない経路=クリティカル・バス」という。
3.クリティカル・マス(Critical Mass)
◆会社・SS・お店などが発展していく過程で、これらの組織が持てる「人、物、金」の数
や量や規模があるレベルに達したときに、一気に成長・向上・繁盛していく。その「上昇分
岐点となる、数・量・規模」をクリティカル・マスという。
◆例えば、資本金が1億円から30億円になる。「投資する力、競争する力、優秀な社員を
雇い入れる力」などが大きくなり、会社が一気に数段階発展していく状況が生まれる。
◆例えば、A会社とB会社が合併する。商売の規模は2〜3倍になるが、従業員数とか店舗
数で重複しているところを削減すると、効率が一気に上がり、会社の業績が更に向上し続け
る状態が生まれてくる。
◆例えば、SS・お店で優秀な従業員の数が半分以上を占めるようになる。お客さんから
「あの店の従業員は皆プロだから何でも任せられる」という信用と信頼が出来上がって一気
に業績が向上するし、一般の従業員の能力も一気に高まる状態が生まれる。
「企業と経営者の使命・目的」についての錯誤事例
GM(ゼネラルモータース)が誤った戦略〜成功がもたらした失敗〜
★1985年に北米で40%を超えていたマーケット・シェアが2004年には27%まで
降下し、2005年1〜3月期は赤字に転落。販売回復の兆しも見えない状況。
◆GMは何を間違えたのか、彼らの過去の戦略を検証すると、
…我々の目的は儲けることであって、クルマを作ることではない。
…エネルギーはいつでも安く、豊富である。
…GMは率先して新しい技術を導入する必要はない。他社の様子を見て、改良・真似をすれ
ばよい。
…消費者は「見栄の象徴」としてクルマを買う。耐久性や品質より、毎年モデルチェンジす
る方が大切である。
…外国車は品質で劣っている。彼らが米国で30%以上のシェアを占めることはない。
教 訓
◆我々は、会社は何によって利益を上げ、社員・従業員は何によって給料を得ているかをよく考えなくてはならない。我々の使命はなにか。その使命を果たすことによって「糧」を得ている。この価値観を常に肝に銘じて業務に取り組むことが、仕事の第一歩である。
◆GMの誤りは、「丈夫で安全な車、効率の良い車、環境にやさしいクルマ、そして快適なクルマ」を造る「使命を忘れて」「金儲け」に目標を置いたところにある。
2005年7月「ジェイズ・マネジメント・実践SS経営者セミナー」より
実践SS研究会主宰 端山忠彦
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