端山忠彦の実践SS学



    「新たなる可能性への挑戦



         
     
    終 章  プロセス能力の再構築 
【2006.10.24 up】



「SS業界の潮目が変わった」
「相次ぐガソリンの大幅値上げが、セルフ化への移行を強制するかのように、業界の様相を一気に変え始めた」

 これが、最近の市場動向から感じる、私の印象です。

この春頃から、元売、お客さま、販売店さんの動きに大きな変化が見られます。
 平均的なお店で見ると、今年になってからの経営状況は、一部予測を含め、ほぼ次のように展開してきているのではないでしょうか。


▼1〜3月は、灯油によって何とか帳尻を合わせることができた。

▼4〜6月は、ゴールデンウィーク以降、値上げの影響から、お客さんの節約志向が強くなり、燃料油、油外商品ともに深刻な販売不振に陥ってしまった。
 加えて、一部のセルフSSがガソリンの減販に耐え切れず、
価格を下げたことから、これが熾烈な価格競争再燃の引き金になり、収支の悪化に拍車をかけた。

▼7〜9月は、前四半期と同様に、八月の第二次大幅値上げの影響がお盆過ぎから顕著になり、経営への圧迫感が次第に強くなってきた。
 フルSSにとっては「来るべきものが時が来た」、セルフSS
では「この先、価格競争でトップ・グループに追随してゆけるか」、SS経営に対する不安感が増してきた。

 これらのことを裏付けるような出来事が、表面化してきていますので、それを追いながら、私の思うところについて触れてゆくことにします。

 先ず、代理店・特約店が元売系列を替える「転籍」が目立ち始めてきたことです。
 元売が見限ったのか、販売店側が新天地を求めて新しいブランドに走ったのか、そこのところは定かではありませんが、元売系列を中心にして出来上がっていた「業界構造」に、亀裂が入り始めたことは確かです。
 これ迄のところは、氷山の一角であって、今後頻発してくるもの予測されます。何故なら、相当数のお店が「現状のままでは・・・・・」と不安を抱え、生き残る方策を懸命に探っておられるからです。


 もう一つの事象としては、SSネットワークが大手販売店、元売販社というところへ集約されるスピードが加速してきたことが上げられます。
 商圏内で中小のお店の廃業、撤退が起こると、いいSSは大手に引き継がれているケースがほとんどです。
 これを見るにつけ、SS業界も他と同様、生き残り策が「寡占化」に向かっていることがよく分かります。

 しかし、これは過剰なSS数を整理統合してゆく過程の一つであって、最終的な解決策でないことは、元売自身が一番よく知っているはずです。市場の環境変化と競争原理が、更なる淘汰と強力な販売業者の登場を促進してゆくでしょう。
 また、SSのオペレーションに関して云えば、それぞれに長所短所はありますが、大手、小手にその差がほとんど無いからです。


 特に、中小規模店の経営陣の方々に、肝に銘じていただきたいことがあります。

 それは、市場での勝ち残り、生き残りの勝敗を決めるのは、元売でもなく、同業者でもなく、「お客さん」であるということです。

「安全、快適、経済性」において信頼のできるお店を、お客さんは絶対的に支持するからです。元売とて同様です。
 ただ、セルフ化という時代の変化への対応が遅れると、そのチャンスを失うことになるでしょう。


 市場環境が揺れ動く時代の変わり目だけに、確実に果たさなければならない基本課題が三つあります。
 ご承知の通り、「客数の拡大」、「油外収益の増大」、「仕入単価の低減」です。その中でも、「油外収益の改善が全く前進しない」という厳しい現実に直面しておられるお店が多いと、推察いたします。

 その原因、理由を辿ってゆくと、SS業務に携わっている人たちの業務を遂行してゆく能力と執念の不足を痛感せざるを得ません。ミーティング等で決まった具体的な行動計画が、何時まで経っても「未実施、立ち消え」という状況が延々と続いているお店は枚挙に暇がありません。私は、この業務遂行力を「プロセス能力」と呼んでいます。


「このままだと・・・・・しまう」という危機的状況についての「理解力が不足」しているとしか言いようがなく、また「どの様にやればよいのか分からない。技術力がないから出来ない」と云ったところを同道巡りしているSSをよく目にします。

 お店の存続はもとより発展は、この「プロセス能力」を鍛え、再構築してゆく以外に道がないと云っても過言ではないでしょう。

 そんなことから、一部重複しますが、お店で取組む上で参考になればと思い、SS業務に携わる人たちが身につけていなくてはならない諸能力について、私の知るところをまとめてみましたので、「プロセス能力」向上のきっかけしていただければ、有難いです。


※基礎能力―走る、投げる、持ち上げるなどの「体力」、話す、聞く、見る、考えるなどの「知力」から成る本能的な能力。

※学習能力―新しいこと、知らないこと、出来ないことを覚えるなど、自らが勉強する能力。

経験能力―仕事を通じて成功、失敗などを繰り返しながら、武器となるものを覚えてゆく能力

※プロセス能力―目的、目標などを達成する過程である活動を確実に実行してゆける能力。

※達成能力―これらの諸能力を駆使してやり遂げる気力、精神力など、困難な壁を突破する能力


 では、具体的なプロセス業務について、オイル、タイヤなどの油外商品販売で一緒に考えてみることにします。

ケースA「その商品が必要であると気づいているお客さん」
・ブランド、グレード、値段、何処で購入するのがいいのかを判断できるお客さん
・SSは、相当な知識、情報をもって、商品を勧めることが要求される
・特に、価格については、SSのマージンなどもオープン
にしながら落としどころを考え、コミュニケーションをとってゆく
・但し、お客さんの指値より少し高いところで販売する。お客さんに「店にも儲けさせた」という気持ちを持っていただくことが、次の販売に繋がるから

ケースB「その商品を必要であると気づいていないお客さん」
・SS側の点検、提案などの勧めに基づいて購入を決めるお客さん
・安全、快適、経済的がお客さんの最大のニーズである。先ずは「お客さんがこちらを向き、耳を傾けてくれる」アプローチが必要
・点検などの勧めが「売るためのものではない」「お客さんに喜んでいただくもの」だという姿勢、心構えがお客さんを「売りつけられる」という不安から開放する
・テスター、リフトアップなどの点検を通じて、商品・作業の必要性をお客さん自身に理解していただく
・その過程で、お客さんが求めている具体的な商品、品質などを見極め、最適商品を提案する
・そして、オートショップ、ディーラーなどの価格情報を与え、購入の決心を促してゆく

 これらは、皆さんが承知していることばかりです。しかし、店頭においては、残念ながら、この半分も実施されていないお店が多いのです。一度、実情を診断されることをお勧めします。

 読者諸氏には、「何故、分かっていると思われることが出来ていないのか」という疑問が、頭を過ぎっているのではないでしょうか。
多くは「慣れと固定観念」から来るのだと思われます。
「どうせ・・・・したって・・・・」という従業員の「諦め」と見るのが一般的でしょう。
「諦めさせたのは誰か」、その責任の大半は、結果を追う余りこれを見逃し、放置してきた経営陣にあると、私は機会あるごとに説いて歩いています。


 お店は、販売と収益目標、それを達成するための活動計画、行動目標などを全従業員に周知徹底して、運営されているはずです。
 しかし、これらは、何れも「表面に現れている」お題目のようなものです。
 実際は、業務に携わる人達の「意欲、情熱、責任感、価値観」といった「水面下にある」内面的な力が加わってはじめて、活動が意思を持った力強いものになります。業績の多くが、これらの人達の内面にかかっていることは、ご経験されている通りです。


 もし、前述の通り、
「どうせやってみても何も変わらない」、
「目標なんて達成で
きるわけがない」、
「挑戦している振りをして、言い訳を用意して置こう」、
 な
どの消極的なマインド、自己防衛本能がお店に蔓延していたらどうでしょう。
 
表面的な活動は空転するばかりで、実績は上がるどころか、下降の一途を辿に違いありません。
 ここが、「プロセス能力」醸成、再構築の最深部になります。

 その要諦は次の二点に凝縮されます。
◆経営陣が「一対一」で従業員と「本音」で話し合い、従業員の自発性、自主性を育む。
「やらせる側とやらされる側」の底辺に漂っている対立を最小化する。

 一見遠回りのように見えますが、昔とた杵柄で腰を据えて取組まれれば、必ずや、お客さんに浸透する業務遂行力お店に甦ってくるものと、確信する次第です。


 最後に、アメリカの経済学者で『不確実性の時代』を著した、J・K・ガルブレイスが遺した言葉を紹介し、「新たなる可能性への挑戦―終章」の結びといたします。

「考え方を変えるか、或いはその必要性がないことを証明するか、選択を迫られた場合、ほとんどの人は証明
する方に飛びつくものだ



 次号よりは、「セルフ化時代の経営革新」をテーマに、私の思うとこを展開て参る所存です。ご期待ください。



     実践SS研究会 端山 忠彦

   NICHIBO SS Family 2006秋号掲載】