実践SS学・セミナーノート4


  「求心力が生まれる瞬間」
  〜クリティカル・パス実践フォローアップ〜






1.「クリティカル・パス」の実践報告

 1)7月に設定した「目標」と「クリティカル・パス業務」、そして「その結果」を、出来るだけ数
 字で表現するようにして書いてください。

 2)活動する中で「うまく行かなかった」のは、どんなことですか?
 3)活動して「うまく行ったこと」は何ですか?
 4)成功(もしくは失敗)の要因は、何であったと思いますか?
 5)この7月〜10月の「クリティカル・パス」活動を通じて学んだことを簡単に書いてください。




2.11月〜1月期間の挑戦課題

 1)現在かかえている業務上の問題を書き出してください。
 2)自分が取り組むべきだと思っている仕事を書き出してください。
 3)上記を参考にして、11月〜1月期間の自分の挑戦テーマを設定してください。
  @挑戦目標
  Aこの目標をクリアーするための業務項目
  B今考えている、自分が取り組むべき「クリティカル・パス」




3.「クリティカル・パス」習得の心構え

■本当は、誰もが「自分に課せられた目標を達成するためのキーとなる仕事・業務が何であるか」は、分かっている。

■しかし、そんな目標を超えることは、「無理だ、困難だ」と自ら壁をつくり、早々と諦めてしまい、「何が目標達成へのクリティカル・パスなのか」を見にくくしているか、見ないようにしている。

■例えば、自分が「迷路」に入りこんだとき、
 ―「きっと誰かが助けに来てくれる」と思ってしまえば、永遠に「他人任せの出口探し」となっ
 てしまう。

 ―「独力で脱出するのだ!」と決意し、根性を入れれば、最後には「出口、突破口」を見つけ出
 すことが出来る。


■その分かれ目は、「本気になって」仕事に取り組んでいるかどうか、ということに尽きる。受講生の各自が学校や職場などて「本気になって取り組んだ」経験があるはず。その経験を、次の項目にしたがって、書いてください。
 1)それは、どんな時の、どの様な場面でしたか?
 2)あなたは、どの様にして取り組みましたか?
 3)結果はどうなりましたか?
 4)もしも、その時にあなたが、本気になることを避けていたら、どの様な結果になっていたと思い
 ますか?





4.熱意と努力の生産性

■人間が積み重ねてきて分かったこと
 ―成功は、99%の努力と1%の才能によって成り立っている。
 ―才能には限界があるが、努力を阻む境界はない。
 ―よって、努力に勝る才能はない。
■努力(満点100)のクラス別生産性効果点。
 (現状を20点と仮定すると)
 ―わずかな努力…【足し算の世界
   ・現状(20点)+わずかな努力(30点)=50点
 ―かなりの努力…【掛け算の世界】
   ・現状(20点)×かなりの努力(70点)=1400点
 ―無限の努力…【乗数の世界
  ・{現状(20点)×無限の努力(100点)}の二乗=400万点

■仕事の成果・生産性の計算式
 公式は、能力×熱意・努力×考え方(戦略・戦術・方向性)

例題1)「能力…3、努力…7、方向性…7」なら、3×7×7=147点
例題2)「能力…3、努力…7、方向性…5」なら、3×7×5=105点
例題3)「能力…3、努力…10、方向性…7」なら、3×10×7=210点
例題4)「能力…5、努力…3、方向性…5」なら、5×3×5=75点
例題5)「能力…7、努力…3、方向性…3」なら、7×3×3=63点

■無限に努力するには→「本気になる」ということ




5.「クリティカル・パス」活動の最も深いところ

■「本気になること」の意味
 ―見せ掛けや冗談ではない、本当の気持ち。
 ―まじめ、真剣、中途半端ではない。
 ―目の前にある目標、壁、敵などの競争相手に対して「自ら進んで、自分の力で」戦う。

■坂村真民さんの詩

   本気になると
   世界が変わってくる
   自分が変わってくる

   変わってこなかったら
   まだ本気になっていない証拠だ

  本気な恋
  本気な仕事
   ああ人間一度 こいつをつかまえんことには

■「クリティカル・パス」の最深部
 ―本気にならなれければ、突き破れない。
 ―本気になれば、こんなに易しいことはない。
 ―本気になれば、「クリティカル・パス」が見えてくる。




6.リーダーと求心力

■組織、グループにおいて強靭な力を発揮するリーダー像
 ―少なくとも「そこそこの業務能力」がある。
 ―「責任感」がある。
 ―強い「好奇心」と「探究心」を持っている。
 ―積極的な「行動力」と新しいものに「挑戦する姿勢」がある。
 ―努力を継続する「根気」と「忍耐力」がある。
 ―「メンバーを叱ること」が出来る。

■リーダーが実行すべきこと
 1)目標に向かって行動し、達成してゆく。
  ・自分がやる、皆でやる、メンバーを動かす。
  ・目標達成の方法と行動計画を作成し、メンバーに説明し、納得させることが出来る。
  ・メンバーの能力を引き出す。
  ・メンバーを動機づける。
  ・メンバーを褒め、叱り、ムチを当てて持てる力を吐き出させる。
 2)メンバーをそれぞれのゴールに辿り着かせる。
  ・活動の継続が困難なことを想定しておく。
  ・その原因を把握しておく。
  ・活動計画の狙いと戦略を、常にメンバーに説明し、そのための具体的な行動をメンバーの頭
   の中に叩き込む。

 3)メンバーよりも三歩先の仕事をする。
   ・メンバーにも出来る業務はメンバーにさせ、自分にしか出来ない教務に専念できるように、
   メンバーを鍛える。

  ・次に起こるだろうことを常に考える。

■リーダーに「求心力」が生まれる瞬間
 ―リーダーの作った活動計画の実施によって、業績が向上し始めたとき。
 ―メンバー個人に良い結果が出なくても、リーダーがその責任を取ってやったとき。
 ―グループ内に独自の「得意分野」が出来、相対的な競争力が優位になってきたとき。
 ―リーダーとメンバーの間に信頼関係が出来てきたとき。

■「求心力」のあるグループに共通していること
 ―グループとして取り決めた共通の活動を、全員が実施している。
 ―その結果リーダーの考えがメンバーを通じて第三者(お客さん等)に明確に伝わっている。
 ―メンバー全員が、自分の役割にしたがって行動している。
 ―グループとして、何か新しいことに挑戦している。
 ―グループが、情報の発信基地となっている。
 ―グループの中から、人材が育っている。




7.優位性の確保

■「優位にある」とは、競争相手が簡単には模倣・追随できない状態にあることを意味する。
■「優位にある」状態を創造する。
 ―SS内には数多くの「義用務」、「商品」、「価格」、「サービス」があり、それらを数名の
 「従業員」が実行し、SSの運営がなされているが、それらの一つひとつはどの相手でも真似る
 ことが出来るし追随することが可能である。

 ―しかし、お客さんから見れば、それらは相互に関係しあってSSの魅力を創り出している。
 ―SS内のすべての活動は、「相互補完」関係にある。その「結びつき方」こそがSS独自のも
 のであり、他のSSが模倣・追随出来ない「差異」を生み出している。

 ―SSの「差別化」とは、この結びつきを徹底的に「補完」していくことによって創り出される
 「優位性」の確立である。


SS優位性算出事例
                        完成度(完璧=1.0)    
   SS業務      Ass    Bss    Css 
@美化・整頓       0.9    0.7    0.5
A洗車力技術        0.7    0.6     0.5
B作業技術        0.7    0.5     0.3
C接客サービス      0.9    0.7    0.5
D価格政策        0.5    0.7    0.9  
(@×A×B×C×D) 0.198  0.103  0.033
※SSの優位力※    1.0    ≒0.5   ≒0.2





☆価格競争の功罪

■資本主義(自由経済)市場における盛衰
 ―「安値価格競争を徹底推進し、薄利多売」に成功したお店が、長期にわたって繁栄したケース
  はほとんどない。その一方で、「高価格政策を採用」してきたお店が、早期に廃業・撤退を強
  いられたケースは圧倒的に多い。

■価格競争の実態
 ―商圏内でより多くのシェアを獲得するため、あるSSが安値政策を開始してプライス・リーダ
  ーになる。すると他のSSが、「負けじ!」とばかりに、そのプライス・リーダーの価格レ
  ベルに模倣・追随するところから価格競争は始まる。
 ―追随を受けた量販志向のプライス・リーダーが価格レベルの引き離しにかかるところから、激
  しい値下げ競争が繰り返される。
 ―仕入れコストに基づいた価格競争ではなく、市場原理に基づいた、生存を賭けた競争の展開に
  なる。
 ―その結果、ほとんどのお店は赤字に転落し、経営的な体力を消耗してしまい、倒れて行くケー
  スが多い。
 ―シェアを獲得した後は保守的な価格政策を採るお店が多くなるが、その間隙を衝いて市場に新
  たな挑戦者が現われて低価格攻勢をかけ、保守的になった勝ち残り店を倒して行く。


■問題提起
 ―資本主義(自由経済)社会は、この価格競争の繰り返しによって物価が下がり、無駄を省くこ
  とによって競争力を向上し、また一方では業界内の新陳代謝を図っていくなど、社会の活性化
  に貢献してきた。
 ―しかし、我々にとっての現実問題として見るなら、それに巻き込まれるお店にとっては、お店
  の永続性が危機に晒され、生存がかかる深刻な問題である。
 ―この価格競争を嘆いてみても何も始まらない。この競争をどうすれば、「賢明に乗り切れる
  か」、「お店の永続性を確保出来るか」、その戦略と政策を構築し、勇気をもって、店頭で
  展開していくことこそが、今、問われている。

■成熟産業界における戦略の選択肢
 a)リーダーシップ戦略=より多くの業界シェアを獲得することによって数少ない勝ち残り店とな
  る。
  …他店が撤退・廃業していくように仕向ける。
  …他店が撤退・廃業し易いように手を差し伸べる。
  …「業界が衰退必死」であることを、信頼できる情報として開示する。
  …新規参入のハードル(条件)を高くする。
  b)ニッチ戦略=衰退していく業界であっても、安定した需要の分野や利益の高い分野などへの集
  中を図る。

 c)撤退戦略=事業資産売却など、キャッシュ・フローの最大化を図る。

■現行継続のポイント
 ―業界の競争構造および要因を再度調査し、把握する。
 ―競合他店との「維持可能な差異」を確立する。
 ―価格競争だけに偏った運営政策から脱却して、差別化と特化を実現する。
 ―(顧客の信頼を損ねる)「矛盾する、お互いに相容れない」活動を展開しない。


                     端山忠彦 実践SS研究会 2005年10月度セミナーより