実践SS学・セミナーノート5


「あなたにとってのクリティカル・パスとは何か」
  〜クリティカル・パス実践フォローアップ〜






前四半期(10月〜1月)の「クリティカル・パス」実践報告

1.設定した「目標」と「クリティカル・パス」を書いてください。
  …目標、クリティカル・パス業務、結果(出来るだけ数字で表現する)

2.活動する中でうまく行かなかったことは何ですか。

3.活動してうまく行ったことは何ですか。

4.成功、もしくは失敗の要因は何であったと思いますか。

5.この期間(11月〜2月)のクリティカル・パス活動を通じて学んだことを簡単に書いてください。





あなたの得意技と得意分野

 我々は、家庭・学校・職場などの生活と活動を通じて多くのことを学習し、経験してきました。その中で、自分の性格・能力・感性などから、好きなもの・うまく出来るもの、すなわち「得意技」「得意分野」がいつしか決まってきています。それらについて、下記の質問にしたがって、「現状」と「将来への希望」に別けて書き入れてください。


1.仕事・職場において得意なもの
  …技術的なもの、精神的なもの(他人の気持ちが分かる、優しく出来るなど)


2.仕事を離れた分野での得意なもの
  …楽器を弾く、読書など

3.仕事についての得意技が、どのようにして好きになり、どのようにして自分の特技というレベルまでになってきましたか。他人がどう思おうが関係なく、自分の思いで書いてください。
   …「好きになった」「得意になった」きっかけや理由など
   …「練習した」「学習した」方法など





今四半期(2月〜4月)の挑戦課題とクリティカル・パス業務

1.現在かかえている業務上の問題を書き出してください。

2.自分が取組むべきだと思っている仕事を書き出してください。

3.上記を参考にして、2月〜4月の自分の挑戦テーマを設定してください。
  …挑戦目標とその分野、目標をクリアーするための業務項目
 …自分が取組むべき「クリティカル・パス」






「デ・ファクト・スタンダード」から学ぶ

1.「覚える」には三つの知恵と方法がある。それは、「見る」「聞く」「試す」

最も重要なのは「試す」こと。
「試す」ことによって観察眼が養われ、探究心が深まる。
試さない限り、技術は自分のものにはならない。


2.「デ・ファクト・スタンダード」の事例

 ビデオ方式を巡る「VHS対ペータマックス」の戦いは、互いに技術的な優劣はないのにVHSが勝者になった。なぜそうなったのか?

VHS側は「お客さんに使用してもらう」という「努力=トライ=試す」を懸命にやって、ビデオ店でのシェアを「VHS60%、ベータ40%」に持って行った。
◆その結果、VHSデッキを買う人が、65%→70%→80%→100%となり、VHSが市場を制覇した。
パソコンOSの「ウインドウズ対マッキントッシュ」もまったく同じで、「既成事実」をより早く作り上げるために色々な「試行錯誤」を沢山やる会社・お店が絶対に勝つ。


3.「事実上の標準」がルールとなった事例

 サラリーマンのユニフォームとも言えるスーツ(背広)がそれ。

サラリーマンがスーツを着るのは法に定められている訳ではない。ある日誰かが最初に会社に着て行った。それが次第に広まり、いつの間にか社会のルールとなった。


4.「武器」となる定理
 「試す」が技術を覚えさせ、「隠し味=魅力」を発見・創造し、「既成事実」を作り、より多くのお客様を引きつける。





「顧客シェア」という新しい概念

1.これまでのマーケティング概念

▼顧客満足度……店が提供する現状の商品・サービスの「質」に対する、お客さんの評価
▼市場シェア……ある商品の総販売量に対する、自社の占有率
▼従業員満足度……「従業員の満足なくして顧客満足なし」との考えから出た労働条件・労働環境の評価


2.顧客シェアとは、お客さんの支出額に占める自社の売り上げ比率

☆例えば、
 クルマ関連に月間20,000円使うお客さんが、そのうちの10,000円を自店で購入していれば、そのお客さんのシェアは50%となる。

☆この考えの狙いは、
 「お客さんを真に理解する」「お客さんの潜在ニーズを探求する」「お客さんの視点で業務のあり方を改善する」「新商品、サービスを開発する」ことにある。



3.顧客発見とは、「お客さんは、自分の欲しいものを具体的には認識していないものだ」というところから発想した考え方

◆お客さんに出来ることは、「遅いとか、良くないとか、高いとかの不満を言う」ことだけである。

−よって、「お客さん自身よりお客さんを理解する」姿勢がなければ顧客シェアを高めることは出来ない。不満の根本原因をトコトン探り当てるとお客さんの願望が見えてくる。それに基づいて商品・サービスに修正を加える。

−お客さんは我々が提供するサービスを、「我慢=妥協」して買ってくれている。それは我々の業務上の制約によって起こる不可避的我慢であるが、少なくすることが出来れば顧客シェアは一気に上がる。





人間にとっての「クリティカル・パス」を考える

1.「人間」について考えてみる

−我々の85%は「感情」で行動し、残りは「理屈」で行動すると言われている。


−また、職場の90%の従業員は「現状維持派」であるとの調査結果が出ている。

−ここに我々が積極的に活動・実行しない大きな要因がある、そのために仕事・業務が前進しない、結果として見違えるほどの実績向上はない、と考えられている。


2.人間の「能力」と仕事について考えてみる

−我々は両親から「食べる、見る、聞く、感じる、歩く、走る」などの動物としての「本能的な基礎能力」を受け継ぎ、あるいは与えられている。


−その基礎能力を、家庭・学校・職場・地域などのより広い場所での教育・学習・経験などによって「人間としての能力」に練磨してきている。

−そして、磨かれた能力を使って、自分の力で生活し、親族などを養い、社会に貢献している。

−しかし、能力に個人差が出てきている。その理由は、「客観的な力の差」「持っている能力の放出率の差」「持っている能力を高める努力の差」があるからである。



3.「能力を磨く場」を考える

−「会社・職場以外にその場所はない」と知るべし。能力は仕事を通じて完成されていく。お客さんの役に立つということは、その能力があるということ。職場で能力を鍛えるということは、出来なかったことに挑戦すること。


4.一人前の人間になる「クリティカル・パス」を考える

−人間が生きていく上で最も基本的なことは「衣食住」の確保であるが、これらを手に入れるためには色々な場面で出現してくる「困難」を克服しなければならない。


−そのためには、「自分の持っている能力を高めること」が必要となる。その努力は自分自身だけでなく家族や仲間の能力をも引き上げる結果を運んでくれる。


−「高い能力」とは、その分野における最高の「武器」を持ち、使いこなすことである。武器とは「得意技」。「プロの知識・技術」「探究心」「学ぶ姿勢」などに裏打ちされる。


−このことを心に刻み込んで取組むなら、集中力・忍耐力・克己心・向上心・闘争心を鍛えることが出来る。


−「クリティカル・パス」は「得意技の開発と習得」である。






SS活動における三大欠落ポイント

1.商品と作業の説明

▼クルーがお客さんに薦めようとする「モノとコト」について、お客さんが理解し納得出来る説明がなされていない。


−お客さんがSSに来る主要目的は給油であって、油外商品購入などではない。よって、クルーの薦めに対して関心が低いと知るべし。

−クルー自身が理解できる程度の、ありきたりな説明ではお客さんはほとんど耳を傾けないし、耳に入っていかない。

−どの様に説明すればお客さんが耳を傾けてくれるのか、「アプローチ」「説明方法」などを徹底して工夫しなければならない。そのヒントは、「お客さんが聞きたいことから話す」「お客さんにとってプラスになると確信していることを話す」「自分の言葉で、自分の経験を通して説明する」「お客さんの知らない、有益なことを話す」などである。



2.新規顧客へのアプローチ

▼飽きずに続ける努力がなされていない。

−月初めは新しいお客へアプローチして説明や推奨をするが、お客の反応が悪いとやる気を失う。「どうせやってもダメだ」と諦めてしまい、活動が継続しなくなる。

−販売目標に「新規」「固定」と別けられている訳でもないこともあり、話を聞いてくれる固定客ばかりへのアプローチとなってしまいがちになり、新規顧客へアプローチする「勇気」はもとより、「技」が退化していくことになっている。

−昨今は固定客が減少し、かつ節約志向の影響もあり、結果は目標未達成・前年割れを繰り返していくことになっている。

−「現状の販売方法」に甘んじているSSとクルーは、絶対に、「壁」を打ち破って前進して行くことはできない。



3.核となる店頭活動

▼SS店頭におけるクルーの活動を取り決めているほとんどは「販売目標」「クルー間連携」「事故防止活動」などの最低限度の内容であり、販売拡大への新客アプローチの仕方や新商品の薦め方などはクルーの個人裁量で行われている。

−「核となる活動」とは、「お客さんが振り向いてくれる、反応してくれる」アプローチ方法・点検の仕方・商品説明法などの徹底検討した接客内容であり、クルー全員が共通して展開する活動のことである。

−核となる活動以上のことはクルー各人が自分の経験・能力・工夫を実行するのだが、このことによって「核となる活動」の有効性と「次の核」となる内容・技が向上してくる。


−店主・マネージャーは、この「核となる活動」の実施状況、内容、研究状況に焦点を当ててフォローアップしていけば、実績はもとより、クルーの「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」となり、人材育成の両方が顕著に向上する。




                     端山忠彦 実践SS研究会 2006年2月度セミナーより