北米報知新聞(NorthAmericanPost)連載エッセイ
      都筑大介 「一言居士のつぶやき」

      緊急レポート「驚天動地」 
           (2011年3月16日掲載)




3月11日午後2時46分、東北地方宮城県沖でマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、震源に近い宮城県東部の各地を震度7が上限の震度計を振り切る烈震が襲った。直後に関東地方茨城県沖でマグニチュード7.4、約2時間後に福島県沖でも6.4の大地震が発生。その後も同じ海域でマグニチュード5〜7クラスの強い余震が頻発した。

ボクが住む東京近郊でも震度5強と大揺れ。幸いに我が家は被害ゼロだったが、ボクの半生で最も大きく最も長く揺れた地震だった。首都圏の交通は麻痺し、帰宅手段を失って駅近辺で一夜を過ごした通勤客は約6万人。横浜に職場がある娘は会社の方が車で送ってくださって無事に帰宅したが、深夜2時の帰宅となった。

 

この大地震は北米プレートと太平洋プレートが交わる日本列島東海域で南北500km東西200kmの範囲に横たわる断層が連続して裂けたためとのことだが、最初の宮城沖巨大地震から約12時間後に今度は内陸部長野県北部で震度6強、日本海沿岸秋田沖で震度6の地震発生。更に、規模は小さかったものの、東京に隣接する千葉県房総半島沖でも地震が発生。気象庁の予測によるとマグニチュード6前後の余震が日本列島東海域で今後1か月程度続く模様だが、何やら不気味な様相である。

 

一方、次第に明らかになってきた被害状況は言語を絶する。確認死亡者数は今のところ約2千人だが、2万人を超えそうである。地震による津波の最大波高は仙台港の10m。波高5〜7mの津波が沿岸市町村を襲って甚大な被害を与えた。宮城沖震源に近い岩手県南部の陸前高田市は地震と大津波によって海に面する市街地全体が壊滅し、家屋5千戸が泥の下に埋まった。同じく震源に近い宮城県北部の南三陸町もほぼ壊滅状態で、人口1万7千人のうち1万人が行方不明となっている。海沿いの市町村は、程度に違いはあるものの津波による被害はやはり甚大であり、行方不明者も多い。

それにしても津波の威力の余りの凄まじさにボクは驚嘆するばかりだった。被害者の方がTV取材に応じて津波来襲時の様子を話しておられたが、津波の波高が20mあったとの話もあり、それは映画『ディープインパクト』のラストシーンとまさしく同じだった。

 

政府は緊急対策本部を立ち上げ、自衛隊員10万人を救助救援に当らせることや被災による避難者への支援物資はすべて国費で賄うことなどを決定したが、一つ深刻な事態が発生している。原子力発電所での事故がそれである。

福島沖震源に近い東京電力福島第1原発は地震発生時に運転を自動停止したが、1号機の原子炉格納容器内の圧力が異常に高まったため、容器内の水蒸気を放出することとした。その作業中に建屋内に溜まった水素が爆発して建屋の一部を破壊。格納容器に損傷はなかったものの、水位が燃料棒の最上部より下がって炉心溶融の危険が生じた。海水注入によって水位を上げて何とか危機は脱したとのことだが、今度は3号機が同様の爆発があり、福島第二原発でも似たようなことが進行していて、予断は許されない状況である。

電力供給に支障の出た東京電力は、政府の了承を得て3月14日早朝から4月末までの計画停電に踏み切った。管轄する関東全体を5つの地域に分け、地域毎に一日当り3〜4時間ずつ輪番で電力供給を止める。初日の14日は何とか電力供給を継続できたが、これによって一般家庭のみならずJRや私鉄などの公共交通機関にも影響が出ている。

 

話は変わるが、ネットで情報確認をしていたら首都圏の土木建設業者のほとんどが姿を消して東北へ向かっているという投稿記事に出くわした。それが事実だとすれば、早速受注競争が始まったことになる。土建業者にとって未曾有のビジネスチャンスかも知れないが、「火事場泥棒」的なあくどいことだけはしないで欲しい、とボクは願う。

菅首相にも注文がある。地震発生翌日に自衛隊の大型ヘリコプターで被災地を上空視察している姿をTVで観て、ボクは対策本部長である首相が5時間近く自分の持ち場を離れたことに驚き呆れた。被害状況はTVに嫌と言うほど流れている。それを、まだ被害の全貌が見えていない段階で、自分の目で直接確かめる必要があったとは到底ボクには思えない。むしろその時間を救援救助にかかわる様々な重要案件の決定に使うべきだと思うのである。機あればパフォーマンスに動く彼の思考回路がボクには理解できない。心や思いは見えないけれど、「心遣い」や「思いやり」は誰の目にも見えるものである。40万人近い被災者を心の底から思いやる首相であって欲しいものだ。

ともあれ、一人でも多くの方が一分でも早く無事に救出されることを願う。

[2010年3月14日]