真実は何処にあるのか



「邪神・ヴァイザ」

血を使い、生物を操る邪悪な獣

それは、時に人への脅威となる

「善神・グリトス」

人の心に安らぎを与える光を放つ聖なる樹

癒しの力を持ち、人を護るもの


なぜ、ヴァイザは存在しているのだろう?

なぜ、グリトスは存在しているのだろう?



「また眉間にしわが寄っていますよ、セイル副団長代理」

突然投げかけられた皮肉に、俺は反射的に顔を上げた。

「放っておいてくれ。今回の任務に関係のあることを考えていただけだ」


俺は、セイル。

邪神ヴァイザを崇め、人々をたぶらかす邪神教を取りしまる、

聖騎士団の副団長―の影武者だ。

邪神教はヴァイザの力を使うことができるらしく、怪しげな技を駆使する。

だからそれに対抗する我々は、もし指揮者がつぶされたとしても混乱しないよう

指揮者の代理を多く持っている。

そもそも指揮者の身に危険が及ばぬよう、影武者もそれなりに存在している。

俺は、やや大柄な体格と、色素の薄い茶髪、濃い蒼の瞳が

副団長の雰囲気と似ているという理由で、

騎士団のメンバーの中から、影武者に選ばれた一人だ。


影武者は、本物と同じように任務が与えられることも少なくない。

今日言い渡された任務は、「邪神教本部と思われる場所の調査」だ。

かなり危険だと想像がつく。

まだ単身で行くのならマシだが、騎士団の者を数名、戦力として連れていけというのだ。

彼らの身になにかあってはならない。

そんな責任が、肩に重くのしかかっていた。

気分は落ち込み、そもそも、なぜ、邪神教の者たちは

邪神などを崇めているのかなどという疑問が頭に浮かんだ。

そして、なぜ善神も、邪神も、お互いに争わないのだろう。

人間ならば、ここまで根本的に異なる存在、お互いを認められず争うだろう。

ちょうど、聖騎士団と邪神教が争うように。

神だから我々とは違うというのだろうか。

いや。

ただ、俺たちが知らない真実があるのだと、俺は確信している。







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