2.忌み子 アメジストに、楽しみができた。 それはベイリルに外に連れ出してもらうこと。 しかし、その幸せは長く続かなかった。 ある日、父親がやってきて、アメジストの手を引いて外へ出た。 父親に連れ出され、外の日差しを思い切り浴びる。すこしまだ眩しくてくらりと来たが、日の光は気持ちが良い。 「お父様…外に出ていいの?」 アメジストは期待を込めて弾んだ声で言った。 しかし父親は彼女のほうを見ようとはしない。そのまま黙って手を引いていくだけだ。 そしてふいに父親は『言葉』を口にする。 「アメジスト。……さらばだ」 次に起こったのは転送の光。唐突なことだったため、アメジストは気を失った。 次に気がついたときには、ただただ白いところへ放り出されていた。父親の姿はもちろん、生物の気配すら感じられない。 そして、とても寒かった。布一枚しか羽織っていない彼女にとって、それは痛みを感じるレベルに達していた。 やむなく翼を体に巻きつけるようにして、アメジストは縮みこむ。 アメジストにはなにもわからなかった。 ここがどこなのか。 なぜ自分がここにいるのか。 父親はなぜこんなことをするのか。 なにも、かも。 そしてまた意識が遠ざかっていく… 「まだ、生きてる」 「そうですか。それは良かった。早く起こしてあげなさい」 声が遠くで聞こえてくる。少女の声と男の声。 「私の体格では無理」 「ふふ、それもそうでしたね。では…」 アメジストの体が宙に持ち上げられる。それを支える体温がとても暖かく感じられた。 助かった? かすかな意識がそう告げた。 ようやくはっきりと意識を取り戻したのは、暗い部屋の中であった。