じゃじゃ〜ん!
僕が噂のハンサム茶太郎くんだよ。
もうじき5歳になるから、もう立派な大人らしいんだけど、生まれてこの方ずっと笑子ママと一緒に暮らしてるせいか、自分が大人になった気はしないね。
それに僕、大人になんかなりたくないし……。今の環境と立場が一番さ。
うちのお父さんもお母さんも優しいし、特にお姉ちゃんが僕のことをすっごく可愛がってくれるから、言うことなしさ。
不満なのは、好き放題には食べさせてもらえないこと。健康のこともあるし、ま、仕方ないか……。「男は我慢」「武士は食わねど高楊枝」って言うもんね。
しかしまあ世の中のヒトは、みんな親切だけど、ワンパターンでつまんないね。
僕が笑子ママと一緒にお母さんに連れられて散歩してると、必ずどこかのオバサンやオジサンが近寄って来るけど、かけてくる言葉はいつも同じ「まあ可愛い!」。
確かに僕は整ったルックスをしてるし、間違いなく可愛いんだけど、ほかの言葉を思いつかないのかねえ。表現力に問題があるな、オバサンやオジサンたちは。
「可愛い」っていうと、僕は小さい頃からホントに可愛かったんだよ。観てよ、下の写真。
これなんか最高じゃない?
僕のお気に入り写真さ。
でも、お父さんはこの写真を見て、「幼虫の時のモスラにそっくりだなあ」って言うんだよ。
そんなことないよね。僕はサナギに入ったりしないし手足も大きくて可愛いのがちゃんとついてるし、絶対違うよね。
お父さんは自分が髭ゴジラだからそう言うんだ、きっと……。
ま、いいか。好きなように言わせといてあげよう、いつもオヤツやご褒美のお菓子を沢山くれるから。
だけど僕って、人気者なんだよね。
うちを訪ねて来るお父さんやお母さんのお客さんは、僕を見ると最初に「可愛い子ですねえ」って言って、次に僕を抱こうとするんだ。
僕は人見知りするタイプだから、優しければ誰でもいいって具合にはいかないんだよ。だから以前は、初めてのヒトが手を出してくるとテーブルの下に駆け込んで隠れてたんだ。
でもね、この頃は、「茶太郎くん!」って名前も呼ばないで僕を抱こうとする相手には噛みついてやることにしてる。
だって失礼じゃない? 断りもしないで僕を抱こうなんて……。
でもホントはね、僕は怖がりなんだ。だから急に手が伸びてくると自己防御本能が働いて噛みついちゃうってわけ。
僕が一番苦手なのがカミナリ。ピカッ、ゴロゴロゴロッときた途端に腰が抜けちゃう。花火のドン、ドドーンって音にもびっくりしちゃうし、地震のグラグラも嫌い。それにぞんざいで無神経なヒトも嫌いだ。
でも、知ってるヒトや匂いで分かる犬族好きなヒトが相手だと、こっちも安心できるから、ついつい愛嬌をふりまいちゃう。それが下の写真さ。
仰向けになって両手をスリスリしながら甘えるだけじゃないんだよ。斜めに構えたり、じっと見つめたり、僕も色々工夫してるんだ。
それに表情だってこんなに色々できるんだ。僕は可愛いだけの縫い包み人形じゃないんだから。
それから、僕には「黒兵衛(クロベー)」っていう弟がいるんだ。養子に行った先で「らるく」に改名したんだけど、時々遊びにくるよ。最近の写真がないのは残念だけど、下を観てくれる? 僕ら仲良し兄弟の昔の写真を。離れて暮らしてるけど、今も仲良しなんだよ。
でも、あれだね。弟のクロベーがそばにいなのはやっぱり寂しいよ。
だって、かけっこや取っ組み合いをやって思いっきり遊べる相手だもん、クロベーは。
仕方ないからママと遊ぶんだけど、この頃はなんだか嫌がってる感じだ。
僕が強すぎるんだろうな、体力的にね。
優しいママだけど弱いんだよ。でも、僕の大好きなママだ。
ママが困らないように、これからは少し手加減してやらなきゃいけないな。
「紳士たるもの、女性に優しくなければいかん。なっ、茶太郎!」って、この間お父さんに言われたし、色々考えなきゃいけないから男はつらいね。
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