子供とあゆむ足跡から


第14集 母親の超能力

子供に向ける母親のふしぎな力について書いてみました(’99年2月作成)。


 今年の冬はいつになく風邪が猛威をふるっています。我が家も、家族の中を順番に一巡りをして、ようやく下火になったかなというころに、またぶり返したりしています。最後まで元気で頑張っていた娘も、クラスの大半が風邪で休みを取るという悪条件に負け、とうとううつってしまいました。それでも、たいした熱も出ず二日ばかり休んだだけで、すぐ登校できるようになりました。

 それから数日たった夜のことでした。家族みんなが寝付き、私も夢うつつになってしばらくたったころ、寝ていると思った妻が突然起きあがり、娘の様子がおかしいと言うのです。額に手を当ててみると、かなりの高熱です。慌てて氷まくらを用意し、解熱剤を飲ませて寝かしつけました。

 突然の発熱は小さな子供にはよくあることです。それでも、寝ていた妻がなぜ気がついたのか、私には不思議なことでした。本人に聞くと、娘の息づかいがおかしかったから、ということでしたが、とてもそれだけとは思えません。通常の五感以外に、母親としての第六感が大きな力となったように感じられました。

 今度のことばかりでなく、母親の子供に対する感覚の鋭さには時々驚かされます。父親と違って、母親はいつも子供に十分な注意を向けているからだ、と言われてしまえば返す言葉はありません。それでも、単なる注意以上の目には見えない力を感じるのは、私だけではないと思います。「超能力」と呼ぶのはちょっとおおげさですが、そばにいるとそんな不思議な力を感じずにはいられません。

 いや、私だって赤ちゃんのころから育児休暇を取って子育てをしてきたから、同じような能力があります、という父親も当然いらっしゃるでしょう。でも、10ヶ月にわたって体の中で育んだ命に対するつながりを乗り越えるには、かなりの時間がかかるように思われます。それこそまさしく、母性本能と呼ぶべきものだからです。別の見方をすれば、先天的な子供とのつながりを持つ母親以上に、意識して努力をしなければ、父親が後天的なつながりを獲得することが難しいことになるわけです。

 このことばかりは、頭で考えていても一向に身に付かない能力なんだろうと、私はそうそうにあきらめてしまっているのですが、世の父親のみなさんはいかがでしょうか?


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