子供とあゆむ足跡から


第42集 しかってはいけないとき

父親として、どのくらい子供の心にそえるのか(’02年8月作成)。


 それは、家族で一泊の温泉旅行からの帰りのことでした。

 上野で特急から乗り換えた山手線の車内は、そろそろ夕方の仕事帰りの時間と重なるころで、家族はバラバラに座席に座っていました。 ところが、それまで、特急の中では陽気だった娘の様子が、すこし変なのです。 何か不安そう顔で、落ち着かない雰囲気です。 私は離れた席にいたので、話しをすることもなく、疲れたのかなと思った程度でした。

 降りる駅に着いてその理由がわかりました。 特急の車内に、切符や財布を入れたポシェットを、忘れてきてしまったのです。 改札は、家内が事情を説明して、そのまま通してもらいました。

 しかし、こちらも旅行帰りで疲れているところへ、よけいな心配ごとを持ち込まれたように感じて、そのときの私は、ムッとした表情をしていたはずです。 娘は家内の脇で、しょんぼりとしています。 顔を見ると、つい小言をいってしまいそうだったので、横を向いていました。

 そう、こんな時、一番その失敗を後悔しているのは、本人自身なのです。 そんなところに小言をいっても、何の意味もありません。 むしろ、本人の不安な気持ちを慰めてあげるべきなんでしょう。 その点では、家内のほうがはるかに賢い対応でした。 最初から怒ることなく、娘をだきしめ、別になくなっても困ることはないから、と言いきかせていました。

 子供たちのため、とか、口ではえらそうなことを言っても、父親の行動は、どうしても仕事中心、自分中心になってしまいます。 夏休みの旅行の時ですら、なかなか家族中心に徹しきれいていないことを、あらためて感じさせらた出来事でした。 普段から子供たちの接している家内の方が、はるかにましなんですね。 反省。

 ちなみに、上野が終着駅ですぐ清掃作業をしたからでしょうか、翌朝には駅から連絡があり、ポシェットは中身と一緒に無事戻ってきました。
     


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