子供とあゆむ足跡から
PTAの抱えている問題について書いてみました(’98年2月作成)。
【PTAはだれのもの】
ニュータウンのPTAに共通する悩み、それは、委員を選ぶことの難しさです。各クラスからの選出委員は、4月始めのクラス懇談会で決めることになります。しかし、積極的に立候補する人は、なかなかありません。しかたなく、担任の先生が一人一人に聞いてまわり、断りきれなかった人が引き受けるようなケースもままあります。
確かに、フルタイムの仕事をしていたり、小さな子供がいて、とても引き受けられそうもない人も増えています。ただ、理由のいかんにかかわらず、本音としては「めんどうな役目は、できるだけさけたい」という人が、大半ではないのでしょうか。PTAが必要であることは理解しても、そこへ直接参加することには消極的なわけです。委員をやりたくない人は、懇談会には出てこないということも起こります。
このような状況に対処するため、最近のニュータウンのPTAでは、登録制度と呼ばれるようなシステムを用いるところが増えてきています。この制度では、細かな違いはありますが、子供一人について6年間のうちで一回は委員を引き受けることを前提としています。あらかじめ何年生で委員を引き受けられるか申告しておいたり、過去の委員経験を記録しておき、未経験者より委員を選んだりします。例外を認めるかどうかなど難しい問題もありますが、いずれも、ある程度の強制力を持たせることで、委員を引き受けてもらおうとするものです。
このような方法を、どう思われるでしょうか。私も、お通夜のような雰囲気になる委員選びの大変さはよくわかります。しかし、強制するような方法が必ずしも良いとは思えませんでした。それは、PTAが任意のボランティア組織であるからです。協力する意志がない人や、活動出来る状況ではない人に無理に引き受けさせても、結局形だけの組織になってしまい、PTAとして存在する意味がないように思えるからです。子供たちのために、あるいは親である自分たちのためにという意識をもった活動でなければ、単なる学校のお手伝いさんに過ぎなくなってしまいます。
ただ、子供を初めて学校に通わせる親にとっては、PTAが何であるかもよくわからないでしょうし、自ら進んで参加するのも難しいものでしょう。あまりに積極的で目立ってしまうと、「あの人はすきだから」と言われてしまうこともあるでしょう。そこで私のいたPTAでは、参加を促すきっかけを与えるものとして、2年目から協力カードのシステムを導入しました。これは、委員協力カードとお手伝い協力カードの2本立てとなっています。委員協力カードは、あらかじめ委員を引き受けられる学年を申告するもので、登録制度と似た内容ですが、委員経験の記入等は自由にしました。運用においても、委員が決まらなかった場合の参考に使用することとしました。一方、お手伝い協力カードは、土日しか活動に参加できない人や、PTAがどんなところかまず見てみたいという人などのために、単独の行事や広報の作成などの、限られた範囲での協力を申し出てもらうものです。
カードの使用により、一度は委員をやらなければ、という認識は少し広まったようです。お手伝いの方は比較的気軽に参加できるため、父親をはじめとして、いままであまり学校にこれなかった人にも、活動に加わってもらえるようになりました。ただ、カードによって委員を引き受けた人の中には、相変わらず委員をやらない人はずるいということで、もっと強制力のあるシステムに変えようとの動きも出てきています。
理想と現実のギャップが広く、なかなか、これという答えのない、難しい問題ですが、「みずから進んで」という前提はくずしてほしくないと、今でも思っています。もちろんそのためには、PTAの存在意義を知らせる活動が、不可欠になりますが。
【学校という社会】
私は、学校を出てすぐに民間会社への勤めをはじめ、そのまま今日まで至っています。したがって、私があたりまえと思っていることは、会社という世界と、自治会で多少経験した地域という世界での常識によるものでした。ところが、PTAで経験することになった学校という世界は、その常識がなかなかあてはまらないところでした。たとえば、普通の会社であれば、仕事の経験年数や能力によって、与えられる仕事の内容も、それに伴う責任も違ってきます。ところが小学校では、新人の先生も、経験何十年ものベテランの先生も、同じようにクラスの担任となります。当然、その授業内容がまったく同じというわけにはいきません。まだまだ未熟ですから、保護者の方といっしょに子供たちを育てていきましょう、そんな話があってもいいのではと思いますが、学校内の状況はなかなか外には伝わってきません。
行政に限らず、民間企業も情報公開姿勢が問われていますが、学校における情報公開はかなり遅れているように思えます。別に、それぞれの先生が閉鎖的だとか保守的だとかいうことではありません。しかし、組織として外部から見ると、わかりにくいところになっています。そのわかりにくさが、なおさら保護者の足を学校から遠ざけるようにも思えます。また、学校の管理職でもある校長先生や副校長先生は、数年で他の学校に異動してしまいます。地域の人たちとの交流を深め、信頼関係を築くには、あまりにも短い期間に思えます。
制度的な問題はすぐには変わらないでしょうが、まずは学校をもっとオープンにする姿勢が必要ではないでしょうか。例えば毎学期に行われる授業参観、平日午後の1〜2時限を指定されていますので、まず父親が参観にいくことは出来ません。また、参観したい科目を選ぶことも出来ません。でも、一週間オープンスクールで見学を自由にするとか、せめてまる1日はいつでも参観できるようにすれば、もっと学校を身近に感じられるようになると思われますが、いかがなものでしょうか。
ちなみに、リンク集に載せた横山さんホームページに、文部省課長の寺脇さんの講演録が記載されています。ちょっと長いですが、現状の学校の問題点についての端的な意見が述べられています。“学校の常識は、世間の非常識”になっているので、学校がもっと信頼されるように変わらなければいけない、ということを話されています。参考になるかと思います。
(その5へつづく)