子供とあゆむ足跡から


第7集 私がPTA会長になったわけ(その6)

PTA活動を振り返ってまとめてみました(’98年4月作成)。


【PTAの知識の受け渡しとOB・OG会】

 PTA役員を退いてから2度目の新年度に入り、しばらくたった朝礼で、異動により学校から出られた先生方の離任、退任式が行われました。この異動により、校長先生が退任、教務主任の先生が昇格異動となり、前年度の副校長先生の異動とあわせて、私が現役でお世話になった役員の先生方は、皆いなくなってしまいました。最後のご挨拶にと思い、わたしも朝礼に参加させていただきましたが、もうお子さんが卒業された方を含め、役員をされたお母さん方が数多く見えていました。立場は違っていても、新設校でいっしょにがんばってきたという共通の思いは忘れがたいものです。

 先生だけでなく、保護者側の役員さんも2期をへて、復帰された方を除き、ほとんど入れ替わってしまいました。PTAの会員や役員となる資格は、自分の子供が学校に通っている間だけですので、当然といえば当然のことでしょう。毎年新たなメンバーで、あまり過去を引きずることなく積極的な活動をすすめることも、ある面では必要なことです。でも、過去の活動を通して、せっかく積み上げてきたいろいろな知識、ノウハウを生かすことができないと、いつまでも足踏みをすることも考えられます。文章だけでは、なかなか伝えきれないことも多いでしょう。たとえば、委員の構成や選出方法について、規約には当然書かれていますが、それだけでは、どのような検討の結果で規約が決まったのか、などについてはよく分かりません。のちのち見直しを行うときに、それまでの経緯が分からないと、初めからいろいろな場合を検討することが必要となってしまいます。それでも規約については、きっちりとした議事録が残っていれば、多少は役に立つかもしれません。もっとめんどうなことは、冠婚葬祭のようなはっきりした取り扱い方が規定できず、おおまかな規約だけでその時の役員の判断が必要となる場合です。先生方本人ならばとにかく、その親御さんの香典の取り扱い方など、なかなか一律には決めかねるところです。こんな場合には、過去の例が重要な判断のよりどころとなります。

 このように貴重な経験を、どのように継承していくかが、人の入れ替わりが多いPTAでのひとつの課題です。新年度の役員が一度に全員交代するのではなく、何人かが残って経験を伝えていくことは、すでに多く取り入れられている方法です。それでも、直接に経験をした人でなければ伝えられないこともかなりありますし、たまにしか起こらないことを、すべて把握することも難しいでしょう。

このような過去の経験を聞ける場として、私の場合は、役員経験者が中心となって作られるOB/OGの会が大変役に立ちました。もともとは現役の役員を含めて、同じ苦労をわかちあった人たちの親睦を深めることを目的として作られるものでしょうが、ここでいろいろな時期の役員の方とのつながりを持っておくことで、有益な助言を得ることができます。私も設立当時の話を聞くことで、いくつかの活動に役立てることができました。この会を通して多くの人たちと知合いになることができたこと、私にとっては今でも、何ものにも変えがたい財産となっています。


【そして再びPTAとはなんだろうか】

 しばらく前に、自宅の近くを歩いていて5〜6年生の子供に声をかけられました。「あ」、と言ってしばらく間があった後に、「学校のおじさん」と言われました。たぶんPTAがなにかを、その子はよく分かってはいなかったのでしょうが、先生でないけれど学校でよく見かけた人だからと、声をかけてくれたのでしょうか。

 役員をしりぞいてからは、学校へ行く機会もめっきりと減りましたが、今でも学校の中を歩いていると、たくさんの子供たちがあいさつをしてくれます。ニヤニヤと笑ってすれちがうだけの子もいますが、それもその子なりのあいさつなんだろうなと思います。

 PTAとはなんだろうか。

 昔とは異なるライフスタイルがあたりまえとなり、具体的な組織や活動面での見直しが必要となっていることも事実です。でも、わが子を含め、まわりの子供たちの成長をみんなで見守っていくこと、社会の厳しさばかりでなく、人としての温かさを子供たちに感じさせてあげること、そんな基本的なことは、これからも変わらないのではと思います。そして、PTAに積極的にかかわることで、親としてみずからも一回り大きく成長することができます。次の時代を作っていくのは、今の子供たちです。その子供の世界が暗いものであったなら、決して明るい時代を予測することはできません。その世界に明るさを与えていくことが、私たち親の責任ではないでしょうか。

 PTAに関してまったくの素人であった私も、周りの多くの方々に助けられて、何とか役員の任期を終えることができました。このホームページの文章では、生意気な意見もたくさん書かせてもらいましたが、そんな私の活動を助けていただいた方々に、あらためて感謝したいと思います。わが子に役員をやめることを話したとき、とても残念がってくれました。子供なりに私の活動を理解してくれていたのかなと思い、やってきたことが間違ってはいなかったと感じてうれしくなりました。

 この文章が、読まれたみなさまの参考に、少しでもなれば幸いです。

(おわり) 


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