つれづれなるままに


第10題 アジアの雑踏から

ごく短期間の滞在でしたが印象深い台湾でした(2002年12月作成)。


 ○南国だったはずだが・・・

 台北(タイペイ)行きの前日に、東京では珍しい12月初旬の初雪が降った。 翌朝の底冷えの寒さのに、これから行く南国で手荷物が増えることを心配しながらも、しっかりと防寒対策に着込んで出かけることにした。

 そう、台湾は、沖縄よりも南にある南国のはずなのである。

 台北国際空港は、市内から西に遠く離れた場所にある。 別名CKS空港と名前が付いているが、よくよく見ると「蒋介石」の略称であった。 今回の訪問地は、さらにそこから南に1時間ぐらい下った、新竹(シンチョン)という地方都市である。この町の郊外に、日本でいえば筑波のようなハイテク工業団地が作られており、そこに仕事先があった。

 初めての台湾行きは、この地方都市の数日間の滞在だけで終わってしまったので、観光ガイドブックとはまるで無縁の旅行記である。

 訪問前に確認した天気予報では、最高気温24度、最低気温16度とのことで、こちらからすると初夏の気候である。 ところが、昼過ぎに台北空港に着いた時の気温が16度。 その後、夕方にかけて気温は更に下がり、10度近くまで冷え込んでしまった。 結局、東京を朝出たときとほとんど変わらない格好で、夕食に出かけるぐらいだった。

 その後の滞在中も、雨が降ったりして、気温が16度を上回ることは、とうとう無かった。 地元の人に聞いたところ、ここまで寒いのは珍しいとのことである。 日本に帰ってきて天気予報を見ると、翌週の予報気温は25度となっており、まさに私が訪問している間だけの気まぐれな気候だったようだ。

 まあ、気温そのものは、今の日本と比べれば、それほどたいした低さではない。 しかし、困ったことに、南国であるだけに冷房は完備しているけれど、暖房設備はほとんどないのである。 どこの建物に出かけても、しばらく座っていると、しんしんと足元が冷えてくるのにはちょっとまいった。 夕食に出かけた地元の料理屋では、給仕をしてくれるお姉さんが、コートにマフラーを巻いたままという状態だった。

 さすがに宿泊場所は、地元では一番の高級ホテルだったので、夜中に寒さで悩まされることが無かったのは幸いだった。 ちなみに、1番とはいえ、その次に2番があるだけで、その2つ以外に、外国人が泊まれるようなまともなホテルは無い場所だったらしいが。
 

 ○バイク天国

 新竹は地方都市だが、それなりの大きな町である。 高速道路を含めて縦横に道が走っており、車が主要な移動手段となっている。 車はトヨタや三菱など日本車が多く、あとはヒュンダイ、フォード、ボルボなど各国製が入り交じっている。 どうも、台湾ブランドの乗用車というのは、無いらしい。

 通りで目に付くのは、バイクの数の多さである。 バイクといっても、日本での原付であり、中型や大型はまったく見かけない。 通りを行き交うその数は、車より多く、路肩にはずらりと駐車バイクの列が出来ている。 二人乗りをする人も多い。 え、三人乗り、と思ってよくよく見たら、赤ん坊を背負った女性が後ろに乗っていたりする。 中国本土だと、自転車が通りを占領して走っている光景がよくTVで流れるが、あの自転車が原付に置き換わったよう状況である。 逆に、自転車はほとんど見かけなかった。

 乗用車も外国製ばかりとなると、一般庶民にはまだまだ高値の花で、一家そろってのお出かけは、1台のバイクに乗り合いでというケースもあるのだろう。 それにしても、原付しか見ないというのは、なんらかの国策があるのだろうか。

 もう一つ、話には聞いたことがあったが、台湾では神風タクシーが健在であった。 空港からホテルまで乗ったタクシーは、高速道路でも車線変更を繰り返して次々と一般車を追い越して行き、なかなかのスリルがあった。 すべての運転手がそうだというわけでは無いようだが、車の増加に道の整備が追い付かず、慢性的な渋滞が地方都市でも見られるので、迅速配達をサービスに一貫と心得ているのかもしれない。

 ちなみに、タクシーの運転手に英語はまったく通じない。 もちろん日本語もだめ。 行き先を告げるのも、ホテルのドアマンに通訳して伝えてもらうか、紙に書いたものを見せるしかない。 だから、ひとたび走り始めたら止めようが無く、運を天にまかせるだけである。
 

 ○所変われば

 ここ新竹の、新旧が入り交じってごみごみした町の風景は、数十年前の日本の町の風景に近い。 もとろん、中心街にはデパートもあり、あちこちの街角にコンビニの店舗も見かけるので、今の時代から取り残こされているわけではない。

 ただ、一つ気が付いたのは、町中に自動販売機が見られないことである。 では何か買いたいときは、どうするのか。 もちろん、コンビニでも飲み物は売っている。 しかし、町の中心街からちょっと外れた道沿いでは、コンビニに代わる小さな店舗がある。 しかし、これがどういう経緯かわからないが、日本人の感覚からすると、ものすごくいかがわしい外見の店舗なのである。

 まず、間口2〜3間程度の通りに面した部分は、ドアまで含めてすべて素通しガラス張りになっている。 そして、その間口は、緑や赤のネオンランプに縁取られており、さらに、扇型に並んだネオンの花が、看板のように通りに突き出してるいる。 ガラスの内側には、バーのカウンターのような背の高い細長いテーブルがセットしてあり、なにやらたばこのような商品が少し置いてある。 さらにその向こう側のに見える壁際には、飲み物を入れたの冷蔵庫が並んでいる。

 まあ、ここまでは一昔前の町角のたばこ屋さんを、ちょいとショーウインドウ仕立てで派手にしたぐらいかな〜と、納得がいかないわけでもない。 しかし、極めつけこの先である。 カウンターテーブルの向こう側には、背の高い丸椅子が1つ置いてあり、そこには”かならず”、ミニスカートを姿のうら若き女性が、表通りに向かって座っているのである。 そう、私の感覚では、どう見ても、援交の受付でもしてる場所のようにしか思えないのである。

 台湾に何回か来たことのある同行者に聞いたところ、こちらではごく普通の光景であるらしい。 そういえば、しばらく前の日本のTVで、台湾南部の露天の果物売りの女性が、客の目を引くため露出度の高い水着姿を競うようになり、当局が規制に乗り出したと、報道していたことを思い出した。 まあ、日本でも看板娘を店先に出すことは、商売ではごくあたりまえのことではあるが、ここまで露骨なものを見たのは始めてである。 文化といってしまえばそれまでだが、さすがに、あまり親しくも無い地元の人に事情を聞くのは気が引けて、なんでこういうスタイルが定着したのか、真相を確かめられずにいる。

 くだんの店舗を見ていると、バイクで走ってきたおじさんが、ドアのところで何か買ってそのまま走り去って行った。 その店の仕事が、自動販売機の代わりであることは間違いなさそうだが、観光客とは無縁の町での派手な光景に、さすがに驚かずにはいられなかった。
 

 ○台湾料理

 もともとは中国から渡ってきた人たちが建国した国であるから、もちろん、台湾料理は中華料理の一種なのであろう。 ただ、その味付けは、脂っこいものが多い中華料理と比べて、日本人の好みに合うような、比較的あっさりしたものが多かった。 食材は、牛、豚、鳥、魚、カキ、エビなど、多彩であり、国内で取れるためか果物類も豊富である。 肉料理に、果物で味付けをしたようなものもある。 もちろん、ビーフン、うどんのような麺類もある。 さらに、ウナギのメニューもあり、ごはんの上にカバ焼きを乗せた、鰻重そのものを食べることも出来た。

 最初の日は、ホテルで教えてもらった地元の料理屋に行った。 そこは、横浜中華街の裏通りにある一番汚い店、といった感じのところで、ちょっと不安に思うところもあったのだが、料理や味はしごくまともであった。 しかし、さすがに食あたりは恐いので、その後は、デパートの中の店とか、ホテルの店とか店舗のきれいなところを選ぶことにした。 値段は、5割増しぐらいになるが、安心料と思えばしかたあるまい。

 中華料理はゲテモノの宝庫でもあるらしいが、あまり変わったものに出くわすことは無かった。 ただひとつ、肉料理のメニューの一つにさりげなく並んでいた、Deep-fried frog legというのを頼んでみた。 そう、たいがいの大きな店では、メニューは漢字と英語で書いてあるので、ほとんど中身はわかるのだが、さすがにこれだけは想像がつかなかった。

 出てきたのは、一口サイズの鳥のフライのような外観である。 骨付きのその肉の食感は、カキのようにあまり歯ごたえがなく、味もちょっと泥臭い程度で、ケチャップ味のソースを付けて食べるのに、それほど抵抗感はなかった。 ただ、お世辞にもおいしいとは言えずに、皆ひとつを食べただけで、2個目の手を出す人はいなかった。

 値段は、それほど格安というほどではないが、3千円も出せば、ビールを加えて十分満腹になる量が食べられる。 地元の料理屋であれば、さらにこの半分で十分ではあるので、胃腸に自信がある方にはおすすめであろうか。
 

 ○漢字フライト

 現地のナショナル航空会社を選ぶのなら、中華航空があるのだが、箱崎でチェックイン出来る便利さから、今回はJAL系列の日本アジア航空を利用した。 現地での表記は日亜航空である。 ちなみに、アメリカの路線も乗り入れているが、ノースウェストの表記は、北西航空ではなく、西北航空となっていた。

 中国語の発音についてはちんぷんかんぷんだが、表記はすべて漢字であるので、だいたいの内容は想像がつく。 それでも、外来語の場合は、意味を表す言葉に翻訳する場合と、音をそのまま漢字に当てはめる場合があるそうで、後者はさすがにお手上げである。 空港の一角に、「網極網路服務」という看板があった。 服務はサービスのことだが、前者はなんと、インターネットの意訳であった。 このたぐいの看板を見ているだけでも、なかなか楽しめる。

 さて、旅の最後はおみやげ選びとなるが、今回のメインは、持ち運びには軽くて便利な台湾名物高山烏龍茶葉とした。 いくつかの種類を試飲させてもらったが、値段が高いものは、薬草のハーブティーのようにかえってくせがある。 普通の値段のポピュラーなものは、日本の緑茶と同じような色と味であったのでこちらを選んだ。

 もう一つの台湾名物土産は、深い緑色の翡翠である。 ペンダントやネックレス、ブレスレットなどに加工して並んでいる。 値段もピンきりであり、中にはプラスチックの偽物も混じっているらしい。

 え、私はどうしたかって? それは、ひ、み、つ(^^)
  


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