つれづれなるままに
文化の違いは、体験しないとなかなか分からないものです(2002年10月作成)。
今回の出張は、6月と同じロサンゼルスとなった。 とはいっても、現地では、もっぱらホテルとオフィスを行きつ戻りつしただけだったが。
○不況の影
昨年の同時多発テロ以降、アメリカの航空業界は落ち込んでいると聞いていたが、なんとなくわかるような気がする。 今回のロス出張では、ユナイテッド航空(UA)を利用したが、どうも内装も古いままだし、機内サービスもあまりいただけない。
まずは、ぱっと見の印象がいまひとつなのである。 もちろん、容姿端麗がなにか暗黙の了解のようになっているJALと違って、欧米の航空会社のスチュワーデスには、筋骨隆々のたくましいワーキングマザーといった風情の人が少なくない。 でも、そんな人ばかり、となると話はちょっと別である。
若い人を雇って、一から育てるというような余裕すらないということなんだろうか。 それとも、若い人にとって、魅力のある仕事では無くなってしまったんだろうか。 まあ、それでも、経験豊富なベテランぞろいということであれば、それほどの違和感は無いのかもしれないが、どうもそのサービスぶりもいまいちとなると、長時間のフライトでは、なんともとりつくろいようがないのである。
行きの便でそんな感じがしたので、このフライトに特有のことだったのかどうか、帰り道にもう一度観察してみたが、大同小異であった。
ただ、UA便で評価できる点をあげるとすれば、着陸がうまいことである。
JAL便に乗っていると、着地の時に、ドーンという衝撃を受けることがままある。
UA便では、コンという程度で実に滑らかに着陸する。
飛行経験の差なのか、はたまた軍用パイロット出身者が多いとかの経歴の差なのかはわからないが、安心感という点からは、十分評価できる。
○食の風景
10月の最終日曜までは夏時間とのことで、10月下旬を向かえた今もサマータイム中である。 しかし、前回6月に訪れた時と比べて、昼間の時間はうんと短くなった。 夕方6時過ぎには、もう日が落ちて、あたりは暗くなっている。
泊っているのは、ロス近郊のオフィス街で、それほど、治安の悪いところではないが、日が暮れてからの徒歩での外出は、あまりおすすめでない。 だいたい、車社会が前提であるためか、暗くなってから歩道を歩いてる人は、ほとんど見かけない。
ということで、夕食は、もっぱらホテル近辺のレストラン利用となった。 まずは、道の反対側に見えていた、イタリアンにいってみた。 まあ、メキシカンよりは、はるかにましである。 ここロスは、メキシコ国境に近いこともあり、スペイン語もかなり一般的に使われている。 また、メキシカンやスパニッシュ系の料理屋も多い。 残念ながら、私はどうもあのスパイシーな味にはなじめなくて、いまだにおいしいと思ったことはないのであるが。
同じ店ばかりでは面白くないので、翌日はちょっと足をのばして日本食レストランに出かけてみた。 もちろん、高級寿司バーではなく、庶民向けの店である。さすがに、にぎり寿司は時価で、一個$3.5くらいするが、それ以外の照り焼きや、すき焼きなどは、$10以下である。 この店では、ご丁寧にビールもサッポロとアサヒという日本テイストに統一されていた。
前々から不思議に思っていたことがある。 それは、日本食といったときに、寿司や天ぷら、刺し身というのはわかるのだが、なぜか照り焼きが、必ずといっていいほど含まれていることである。 そう、あのマクドナルドでも、唯一の日本風味のレギュラーメニューとなっているのである。
どうも、理由はその味にありそうだ。
こちらで食べる照り焼きは、概してあまったるい味なのである。
もちろん、日本と同じように醤油のベースの味なのだが、それ以上にカルメラソースでもなめているような、こってりとした甘い味がする。
あて推量だが、どうも、この甘味を強調したソースが、甘いもの好きのこちらの人にフィットしたからではなかろうか。
○間違いだらけの日本風
さて、日本料理店で、日本食を注文したからといって、日本と同じように食べられると思ったら間違いである。
まずは、ビールなどアルコール類でのどを湿らせていると、やおら味噌汁が運ばれてくる。 そう、味噌汁ではなく、味噌スープの扱いなのである。 このまま、メインディッシュが出てくるまでほっておいても、さめてしまっておいしくなくなる。 しかたなく、味噌汁だけを先にすすることになる。
次に、ごはんが出てくる。 気のきいた店では、お新香の小皿が付いてくるときもある。 そう、これは、パンの代わりに位置しているのである。 これにお茶をかけて食べてしまったら、日本では仕上げのパターンだよな〜、と思いながら、酒のさかなにお新香をつまんでいると、ようやく主菜のお出ましとなる。
もちろん、こちらのスタイルに合わせてあるから、分量も半端ではない。 今回は、サケの照り焼きを注文したが、日本では1つで1人分というような大きさの切り身が、なんと3つもお皿に並んで出てきた。 で、それらを平らげた後に、こちらの人は、さらに甘いデザートをほうばっているのである。 ここまでフォロー出来ないと、アメリカ人にはなりきれない。
健康のためと、食事を野菜サラダやフルーツカクテルだけに減らしながら、ダイエットコークをがぶのみし、リフレッシュメントと称して、仕事の合間にケーキやクッキーをつまむわけだから、そのでっぷりした体格はなかなか変わらないわけである。
こちらのTVでも、使用前、使用後というたぐいのコマーシャルが、しきりと流れていた。
それも、女性に混じって、男性も登場するところが、いかにもアメリカである。
○車が主役か
街中を歩いている人は少ないといったが、さすがに昼間の表通りは、オフィスで働く人など、それなりに人出がある。 縦横に走る通りにも、全部歩道が設けられている。
それでも、変わっていると思うのは、各交差点にある歩行者用の信号のほとんどが、押しボタン式となっていることである。 車向けの信号は自動的に切り変わるが、歩行者向けの信号は、ボタンを押さないと、いつまでたっても赤のままでなのである。 交差点のたびごとにボタンを押さないといけないのも、けっこう、面倒くさいものである。 それだけ、歩行者は多くはないということだろうが、あまり、歩行者に親切な作りではない。
広大なロサンゼルスの市街地を縦横に結んでいるのが、高速道路のフリーウェイである。 その名の如く、一般道と同じでタダである。 そのためもあってか、片側4〜5車線もあるのにもかかわらず、場所によっては結構渋滞している。
おもしろいのは、中央よりの1〜2車線が、Car Pool Onlyと表示された、特別レーンになっていることである。 時々説明の看板が出ているが、2人以上乗車した車以外は通行禁止のレーンである。 渋滞対策として、かなり以前から設けられている制度らしい。 乗客を乗せたタクシーは、もちろん対象車となるので、空港からホテルまでの往復に乗ったタクシーは、このレーンをすっ飛ばして行った。
そういわれて見ると、走っている車の大半は、老若男女の区別無く運転手1人だけしか乗っていない場合が多い。
まあ、1人1台の車保有があたりまえの国だから、当然といえば当然なんだが。
○アメリカ人とディベート
日本の学校での教育改革議論の中で、アメリカで行われているディベート、いわゆる討論を行う授業を取り入れ、論理的思考や自己主張がちゃんと出来るように教育するべきだとの意見がよく聞かれる。 確かに、どちらかというと、目立つようなことは嫌われてきた日本の風潮では、なかなか身につきにくい能力であるかもしれない。 では、アメリカ人の方が一般的に議論する能力が高いのかというと、どうもそうとも思えないふしがある。
今回の出張中に、アメリカ人と日本人が入り乱れて、白熱した論戦を戦わせる会議に出席させられた。 午前中半日の予定だった会議は延々と続き、終わったのは真夜中近くになってからであった。
この中でも感じたことだが、アメリカ人の発言の方が、一見、弁舌さわやかに聞こえる。 日本人の方は、英語力の差もあって、なかなか流暢な発言とはいかない。 しかし、アメリカ人の発言は、自己主張ばかりが目立ち、対立するとどうもにも打開のしようがなくなる。 議論が煮詰まってくると、感情的になってしまうケースも見られる。 結局、強引な多数決でどちらかを選ぶか、決裂するかしか無くなってしまう。 日本人の方は、少しずつ意見を変えながら、粘り強く、妥協点を探ろうとする。 もちろん、個人的な性格や能力に依存する部分が多いので、すべての人がそうだとは言えないが、わたしの出会った経験からは、こんな傾向がよく見られる。
何かというと、欧米で行われていることが先進的で、自らの能力や文化を、否定する傾向が日本にはあるが、それほど卑下する必要はないと思われる。
結局、先の会議でも、日本人が示した妥協案になんとか収束したのである。
○余談
最後に帰りのフライトで、変わった経験をした。
搭乗ゲートを離れて、滑走路に向かって走り出した飛行機が、誘導路の途中で一時停止をした。 何ごとかと思ったら、機長が機内アナウンスで、チェックインして荷物を預けたのに、乗車しなかった乗客がいるので、その荷物をここで降ろすというのである。 10分ほど床下でごとごとと、荷物室を操作する音がしていた。 ちゃんと荷物は見つかったようで、また何事もなかったかのように走り出し、滑走路から飛び立った。
もちろん、セキュリティーの為であるが、日本であればゲートを離れる前にチェックすることだろう。 いかにもアメリカ的な対処のしかたである。 しかし、満席に近い搭乗率だった乗客の荷物を、コンテナを降ろすこと無く、貨物室の中で短時間で探しだせることに、妙に感心してしまった。 そこまで、管理が行き届いているなら、なんであれほど預けた荷物の紛失が、よく起こるんだろうか。
ここのところの出張では、極力荷物の量を減らして、すべて機内持ち込みとしているのは、荷物受け取りに待たされる時間の節約とともに、紛失のリスクをさけるためでもある。
かさばるおみやげ物にも、手をださないようにしないといけないのだが、もちろん、手ぶらでは帰ってこれない。
今回も、ちゃんと仕上げはした、つもりだが、さて、結果は・・・