つれづれなるままに


第2題 アジアの街かどから

 つづけての出張先は韓国の道中で書きとめたものです(2000年12月作成)。


☆ ソウル金浦空港にて ☆

 アジアといっても今回の出張先は、ぐっと近場の隣国ソウルとなった。成田からのフライトは、わずか2時間半であるから、我が家から成田の飛行機にたどり着くまでの方が時間がかかってしまう。箱崎のTCATでチェックインと出国審査を済ましてしまうので、成田での行列のうち2つをパス出来るが、それでも3時間以上は見込む必要がある。しかも日程は国内出張並みで、行って帰ってくるだけになりそうな予感。まあ、お仕事、お仕事・・・

 空港でちょっと搭乗までの時間に両替でもと思ったが、なんと成田では韓国ウォンは交換できなかった。当然希望者は多いはずで、説明の手間をはぶくためか、窓口に中国元と韓国ウォンは両替不可の貼り紙がしてあった。香港ドルもタイバーツも交換できるのに、どうしてだろうか?貨幣政策が違うため、国際流通をしていない?でも、インターネットでは最新の為替レートがちゃんと載っていたよな〜。う〜ん、経済にうとい頭ではようわからん。でもまてよ、そうなるとウォンを余らせて持って帰っても、成田じゃ交換できないことになるのか。あぶない、あぶない。以前に、インドルピーで同じようなことがあったな。

 さて、満席のジャンボではあったが、おとなしい仕事人ばかりだったようで、おしゃべりにわずらわされることもなく、ソウルに着いた。ここは、東京と同じ1000万都市らしいが、韓国に人口からすると、4人に1人はソウル市民ということになる。どうりで、空港にもいっぱいの人がいるわけだ。

 さてさて、まずは地下鉄を探さなくては。
 


☆ 地下鉄にて ☆

 ソウルの地下鉄は乗っていても、あまり違和感を感じない。日本人と血筋の近い民族で、顔つきがほとんど変わらないこともあるが、ファッションが日本とそっくりなこともその理由の一つである。スーツにネクタイのビジネスマン、ロングコートのレディー、リックを背負ったカジュアルウェアの女の子、携帯電話のキーを一心に押している若者。さすがに、茶髪はみかけないようだ。
 ここの地下鉄の良いところは、駅名にすべて通し番号がついていること。数字をたどっていけば、目的地まで迷わずたどりつける。これは、東京の地下鉄もぜひ見習ってほしいシステムだ。おっと、でもここは地下鉄も右側通行だから、乗る方向には注意しないと、逆に行ってしまうぞ。

 さて、円から韓国の通貨ウォンへの両替をすると、ちょっとお金持ちになった気分を味わえる。円とのレートがほぼ1桁違うのに対し、紙幣は1万、5千、千、硬貨は5百、百と、金額は円と同じなのだ。そう、例の5百ウォンなど、色も形もデザインまでがそっくりで、たしかに、日本の自動販売機に入れてみたくなるしろものである。 分厚くなった財布ではあるが、さて物価の方はどうであろうか。残念ながら、街中の表示はハングル文字ばかりで、ちんぷんかんぷんだが、数字を見る限り、さすがに桁違いに安いと言うことは、なさそうである。漢字が分かる国だし、名前も漢字なんだから、もう少し漢字表記を一般に使えばいいのに、とも思うが、どうも、国策的にハングル文字化を進めた経緯があるらしい。

 え、あ、なに? おばあさん、もしかして、わたしに、道をきいているの? ダメダメ、ワタシ、ガイコクジンネ、コトバ、ワカラナ〜イ
 やれやれ、いくら違和感がないとはいっても・・・・・
 


☆ 繁華街の食堂にて ☆

 韓国料理のメニューといえば、日本で見かけるキムチのような辛いものが多いと思っていたが、必ずしもそうではないらしい。好みによって味付けが違うのかもしれないが、水炊きギョウザのような鍋や、さっぱり味の焼肉、豆から作ったコンニャクもどき、キムチ色ではあるがあっさりしたイカの塩辛もどき。さすがに、はくさいのキムチだけは、本場の辛い味付けだった。
 キムチそのものも、日本の焼き肉屋にあるような唐辛子色の物だけでなく、さまざまな種類がある。大根を水につけたようなもの、スライスしたキノコをつけ込んだようなもの、青菜を浸したようなものなど、まったく辛さを感じない。韓国料理をオーダーすると、そんな6〜8種類ぐらいのキムチの小皿がずらりと並べられる。日本でいえば、漬物と同じような、一般名称がキムチということらしい。

 ところで、国が違えば、いろいろな習慣も違っていてあたりまえだが、宴席で気をつけなければいけない、こちらのマナーがある、と後から教えられた。それは、グラスやさかづきが空く前に、お酒のつぎたしをしないことである。日本でも、味が変わるからと嫌う人はいるようだが、そういう単純な好みの問題ではない。どうもこちらでは、葬儀のときにそのような作法があるらしい。日本でいえば、ごはんにハシを立てるようなものだろうか。郷に入れば郷に従えであるが、知らなかったことは、どうしようもない。まあ、日本のことを知っている人だから、許してはくれたが。

 ちなみに韓国もハシの文化圏であるが、食事に出てくるハシは、メッキがされた金属製のものばかりである。これは、街の食堂やレストランばかりでなく、一般家庭でも同じだそうである。よくよく聞いて見ると、柄の長いスプーン、そう、日本だと石焼きビビンバをたのんだ時に付いてくるような、あのスプーンとハシとがセットになっているものらしい。確かに、食事のテーブルには、必ず2つがペアでセットされているし、街中や土産物屋でもセットで売っている。金属製のもので、柄の模様のデザインをそろえたものでが、伝統的に使われていると聞くと、西洋のフォークとスプーンの関係のようで、なんとなく理解できるような気もする。それでも、お隣の中国では、金属製のハシもスプーンも見かけないので、陸続きであるとはいえ、それなりのお国柄が現れている。

 で、さらによくよく聞くと、スプーンがあるということは、スープなどの汁物は、スプーンで食べるのがマナーであり、直接うつわに口をつけてすするのは、下品な行為になるそうだ。

 げ、げ、げ、それは食べる前にいってくれよう〜
 


☆ 延世大学のキャンパスにて ☆

 新村は大学の多いところだが、なかでも梨花女子大は、韓国随一の名門のお嬢様大学だそうである。英語では Ewha Women's University と表記し、イファとよんでいる。それに隣接して、やはり私立一番の名門、延世大学の広大なキャンバスが広がっている。こちらは、Yonsei University と書く。どちらも、キリスト教系の学校である。ちなみに、延世が韓国全体では二番のランクであり、一番が国立のソウル大学とのことだ。

 ということで、隣接大学間でのペアリングが多いのかどうかはわからないが、学生のカップルが付近の街中にあふれている。ところが、なかのよい恋人同士でも、いざ結婚となると、こちらでは、なかなか大変なことらしい。それは、同じ一族内では、結婚ができないという制約である。な〜んだ、日本だって数等親ぐらいまではだめだぞ、と思ったら、とんでもない。何と、それぞれの家庭には、10数代にわたる一族の家系図があり、その中に連なってると、結婚はできないのだそうだ。これだけの世代をさかのぼるとなると、枝別れする数も半端ではない。それに、さらに嫁いできた人の元の家系図も加わると、お互いは見ず知らずの人が、ほとんどということになる。
 このために、若い人もお互いにつきあい始める段階から、かなりこの家系のことを、気にするそうである。それはそうだろう、いざお互いに気にいった段階でダメを出されたら、たまったもんではない。一つ目のチェックポイントは、もちろんお互いの名前である。金とか朴とか同じ姓の人がこちらでは多いが、それぞれの地域で区別されていて、地域名からとる屋号のようなものがあり、どこどこの金という使い方をするらしい。それがOKだと、後はひたすら家系図を調べるしかないらしい。最近は、法律的にも多少緩和されたらしいが、本人にとっても周りにとっても、シリアスな問題であるのは容易に想像される。そのため、若い時は目一杯楽しもうとしているのかどうかは、わからないが、真夜中近くなっても、繁華街を歩く若者の人通りがとだえることがない。

 ちなみに韓国では、キリスト教と仏教の信者が、ほぼ半々だそうである。延世大学の前の繁華街の真ん中にも、古い立派な教会が立っている。それでも、家系のような古い伝統は、生活の基本のようである。
 おっと、これはでは、年寄り世代の感想になってしまったかな。
 


☆ 再び金浦空港ロビーにて ☆

 仕事を終えてから空港へ行く前に、ソウル一番の賑わいという南大門市場を、おみやげを探しながら歩いてみた。アメ横のような軒を連ねた商店街に、人と商品とがあふれかえっている。衣料品の店が多く、見る目があれば数万ウォンというから数千円でかなりのものが安く手に入るようである。あとは、ブランドのまがいものと思われ時計を、ショーケース1つで売っている店が、たくさん並んでいる。
 当然日本人観光客は得意客のようで、店頭に立っている人は、日本語で値段と品物の説明ができる。でも、値切りにかかると突然理解力が落ちるのは、商売のうまさか。とりあえずだまっていても、最初の言い値の一割は落ちるので、それからが勝負のようである。残念ながら、時間がなくて今回はこの段階であきらめてしまったが、2〜3割はあたりまえとの話もあるようだ。

 のりがおすすめときいたので、ちょっとかさばるが1つ求めてみた。日本のものと見た目は変わらないが、材料は岩のりで、ゴマ油と塩で味が着けてある。日本でも最近、手に入るようになったと聞いたが、まあ、ものは試しに持って帰ってみよう。

 空港までは、市内からタクシーで40分程度かかるが、この料金が27000ウォンということで、またかなり安い。地下鉄もかなりの区間まで600ウォンということだから、交通費はとりわけ安いのだろう。ソウル市街の外れにある空港までは、20階はあるような高層住宅群が、ずっと続いていた。そう、1000万の人口を吸収するには、とても一戸建では間に会わないよな〜。

 おっと、帰りは団体旅行といっしょか。やれやれ、手荷物がみんなキムチ臭いぞ。
 


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