つれづれなるままに


第6題 ハリウッドの街かどから

アメリカのなかでも、いかにもアメリカらしい雰囲気のある街からです(2002年6月作成)。


 久しぶりのアメリカ出張となった。

 ロサンゼルスの街なみは、上空の飛行機から見てもただっ広く、片側5車線のフリーウェイが、縦横に走っている。

 いかにも、アメリカという雰囲気を感じるこの街は、買い物も、食事も、すべてが、車社会であることを前提としている。 狭い島国からの訪問者には、とまどうことばかりである。横断歩道の信号でさえ、変わってすぐ渡りはじめても、半分過ぎにはもう点滅をはじめる始末である。

 旅行者にとって移動の頼りになるタクシーも、空港やホテル以外の場所で見つけることは難しい。 自分の車で移動するがあたりまえのこちらの人にとっては、無用のものなのであろうか。 そのタクシーときたら、初夏の日差しで30度近くもあろうかというのに、クーラーもついていない始末である。 日本とは違ってカラッとしているので、日陰に入ればすごしやすいが、さすがに炎天下の車内には閉口させられる。

 そうそう、まだ5月の末だというのに、道行く女性は、すでにノースリーブやタンクトップ姿である。 もっと暑い季節になったら、いったい、どういうスタイルになるんだろうか。

 ◇ ◇

 今回の仕事場は、ハリウッドである。

 といっても、残念ながら、映画の出演依頼が舞い込んだわけではない。 たまたま相手の都合で、場所がハリウッドになっただけである。 まあ、そうはいっても、まずは映画の街に敬意を表して、有名なチャイニーズシアター前のスターの手形、足型を見に行った。 多くの観光客が、熱心に足もとのサインの品定めをしていたが、残念ながら、達筆すぎて、私には、だれのものかはほとんど判別がつかなかった。

 写真によく出てくるHOLLYWOODの字の並ぶ山を望む、ショッピングセンターのテラスで、サンドイッチをほおばりながら、しばらく道行く人を眺めていた。 男女の区別なく、太った人が多い国というのが以前の印象であった。 きっと普通の乗用車の運転席には収まらないんじゃないか、と思うほどの極端な人は、昨今の健康ブームで、さすがに減ったように見える。 それでも、平均値は日本人と比べるとかなり大きい。

 あとで、現地駐在経験のある同僚に聞いたところ、同じアメリカでも北へ行くほど、太った人は減ってくるという。 同じ西海岸でも、マリナーズの本拠値シアトルでは、極端に太った人はほとんど見かけないので、やはり、気候が関係しているのではないか、とのことであった。

 ◇ ◇

 街をあちこちと訪れて、気がついたことが1つ。 それは、スターバックスのカフェが、やたらとあちこちにあることである。 これは、街中ばかりでなく、郊外に出かけたときも同じで、小さなショッピングセンターにも、かならずと言っていいほどスタバの看板を見かけた。 さらに、空港の待合室のカフェもスタバだし、おまけに往復利用したユナイテッド航空の機内サービスのコーヒーも、ご丁寧にスタバの表示がしてあった。 スタバにあらずんば、コーヒーにあらずというような勢いである。

 マックと同じで、たしかにこちらが発祥ではあるが、そんなにアメリカって、コーヒー好きの国だったんだろうか。 それとも、単なる流行のファッションなんだろうか。 よく、理解できない現象である。 まあ、日本でもはやり出すと、ねこも杓子もユニクロというようなことは、ままあることだから、驚くこともないのかもしれない。

 そういえば、かつてはよく見かけた本家マックの看板は、逆にあんまり見かけなかったような気もするが・・・・

 ◇ ◇

 仕事の打ち合わせは、メジャー映画会社の1つであるワーナーブラザーズのスタジオ村の中で行われた。

 ここは、ユニバーサルスタジオのような、観光客向けのテーマパークではない。 予約すれば、一般の人の見学ツアーもできるようだが、実際に、映画やTVドラマの撮影が行われている現場である。 打ち合わせの合間に、すこし見学をさせてもらった。 屋内撮影用の大きな倉庫のような建屋が並んでいるところと、いくつかの時代の街並みを再現したような、オープンセットの区域とがある。 オープンセットの一角には、日本でも放映されているTVドラマ「ER」の急患入口のセットがあり、見学ツアーのコースとなっていた。

 1930年代から使われているスタジオ建屋もあり、入口のは、そこで撮影された主な映画のタイトルが刻まれている。 残念ながら、邦訳でなく英語の原題を知っている映画は少ないが、40年代に、あの有名なカサブランカの字が読み取れた。 ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンが、このスタジオでラブシーンを演じていたのだろうか。

 中は日本と同じように、高い天井から照明などの機材がぶらさがっており、舞台装置となるセットが床に組み立てられている。 建屋の中にとくに部屋はないようで、撮影が行われているところでは、衣装、控え室、化粧室、食堂などの大型トレーラーが、建屋の脇に並べられており、ロケ現場のような状況であった。

 日本では古い撮影所が次々と姿を消しているが、こちらでは一時ほどではないにしても、まだまだ花形の一つなのであろうか。 そんな、活気も感じられた。

 街の土産物屋のあちこちに、オスカー像のレプリカが並んでいた。 どんな人が、買っていくのか興味があったが、私が見ている間に手をだした人は、残念ながらいなかった。 もう一つ残念だったことは、せっかく数日間スタジオの中をうろうろしていたのに、映画スターの姿を見るチャンスが、無かったこと。 まあ、いずれにしても、テーマパークのような表舞台ばかりでなく、裏舞台のスタジオツアーも、アメリカらしい光景をかいま見る機会として、ぜひ、おすすめします。

 ◇ ◇

 そうそう、出張の最後になって、たぶん、そうなるだろうと予想していたことに出くわした。

 出張予定が決まり、2週間ほど前に、航空券の手配をしたのだが、帰国便がどの航空会社も満席で取れなかったのである。 キャンセル待ちをして、なんとかチケットを確保したが、たぶんあれの影響だろうと思っていた。

 帰国便の待合いロビーに行くと、おそろいのユニフォームを着た一団が、「オーレー、オレオレ、オレー」と盛り上がっている。 そう、W杯応援団である。 私が出くわしたのは、真っ赤なユニフォームを着たコスタリカの応援ツアーの一団であった。 たしか、韓国での開催のはずなので、アメリカ、日本と経由してのツアーなのだろう。 さすがに飛行中の機内で騒ぐことはしなかったが、成田に無事着陸したとたんに、また、「オーレー、オレオレ、オレー」とやっていた。 まあ、安くはない旅費を無理して払って、一生に一度かもしれないアジアツアーに参加しているんだろうから、多少のことは仕方がないか。

あ、ちなみに、私は、決して遊びに行ったのではなく、仕事のためですので、あしからず(^^)

  


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