ニュータウンあれこれ


第7話 お祭りの舞台裏から(その1)

 「祭り」と聞いてみなさんが思いうかべるものは、どんなお祭りでしょうか。みこしやだしの練り歩く神社の祭りでしょうか、ゆかた姿が涼しげな盆踊りでしょうか、それとも華やかな飾りの七夕でしょうか。ここニュータウンでも、いろいろな祭りがありますが、夏には、地元の町内会や自治会によるお祭りが多くおこなわれています。昔ながらの盆踊りスタイルのところもあれば、ステージ出しものを中心としたところなど、内容もさまざまです。

 この文では、何年かにわたって企画、運営を行ってきた自治会の夏祭りの経験をもとに、その内容を舞台裏からまとめてみました。(’98年9月作成)

 


【目的について】

 「住民間の親睦を深めるため」というのが、地域で主催する場合の一番大きな目的でしょうか。運営する側も参加する側も同じ地域の住民であり、時とその役割が入れ替わることもあるわけです。これに、子供会の活動費用を売上でおぎなうためとか、同好会やサークルの発表のためとか、その状況によっていろいろな目的が加わってきます。

 また、町内会や自治会の恒例の行事となってくると、周辺の町内会、区役所、消防署などの行政機関、地域の学校の先生などとの貴重な交流の場ともなります。そう、お祭りに行くと、テントの中でお酒を汲み交わしているおじさんたちをよく見かけますよね。あれは、まさに地元の社交会の真最中なわけです。
 


【企画運営の流れについて】

 それぞれの細かい内容に入る前に、祭りの企画運営全体の流れの例を時間を追って見ておきます。

  <実行委員会>  <準備活動>
3ヶ月前・発起人や役員によるよびかけ
  ↓・準備のための組織つくり
2ヶ月前・内容の話し合い ・各方面への協力の打診
  ↓・寄付金の依頼の開始
  ↓・ポスター掲示
1ヶ月前・プログラム確定 ・出店希望者の一般募集
  ↓・設備関係の手配
  ↓・当日スケジュール確認 ・プログラムの一般配布
数日前・会場設備関係下準備
  ↓・もぎ店材料仕入れ
 当日・実施の有無の確認 ・設営、運営
 翌日・後片づけ、費用精算
数週間後・反省会、次回への申し送り ・会計残金(不足金)処理

 このような流れを踏まえて、細かい運営内容について以下に述べてみます。
 


【開催場所の条件】

 数百人をこえるような祭りとなれば、どこで行ってもOKとはいきません。考えておくべき条件としては以下の通りです。

 ○広さ・・・・・内容にあった広さはあるか
         一カ所で無理なら内容によって会場を分けることもある

 ○電気・・・・・会場の照明などの電気が取れるところ
         容量が必要なら電力会社に申請し電柱から引くこともできる

 ○水道・・・・・もぎ店の洗い物などの水場があれば便利

 ○トイレ・・・・会場内や近くにあればベター

 ○出入口・・・・トラック等による設備の運搬が可能か        

 ○交通安全・・・会場の出入口付近や会場内の歩行者往来は安全か

 ○近隣住宅・・・祭りの間は騒々しくなりますので周囲へも配慮を

 ニュータウンでは、近くの公園や緑地が候補となります。学校の校庭なども、学校側の協力が得られるならば有力な候補でしょう。
 


【どんなプログラムにするか】

 企画のスタートは、どんな内容の祭りを行うかを考えることからです。

「盆踊り」
 これは、古くからの町内会ではポピュラーな出物で、夏祭りと聞いてみなが連想するのもこれでしょうか。太鼓の音色は客寄せにも最適です。でも、それなりの広さの場所と、やぐらの設置などに相応の費用がかかります。新しい自治会で行うには、ちょっと荷が重いかもしれません。

「ステージショー」
 私がかかわっていた夏祭りでは、公園内の階段を利用して行えるものとして、祭りのメーンになっていました。平らな広場に舞台を作るのは費用もかかりますが、適当な段差がある場所があれば、音響と簡単な照明を用意するだけで、比較的手軽に行うことが出来ます。地域のバンドやコーラス等の発表の場として出演してもろうことも出来ますし、ビールの早飲み競争のような、観客を巻き込んでのゲームなど、いろいろな企画が考えられます。最近は、このようなステージイベントを取り入れた祭りが、少しずつ増えているようです。

「もぎ店、ゲームコーナー」
 お祭りに屋台はつきものです。縁日の気分を盛りあげてくれる、大切な脇役です。でも、これを一般の業者に依頼してしまうか、それとも自分たちで出店するかでかなり内容は異なってきます。出店する側も地域の人やグループとなれば、運営は大変ですがそれだけコミュニケーションの機会を増やすことができます。価格についても、人手がボランティアになりますので、そこそこの値段で参加者に提供することが出来ます。

「フリーマーケット」
 単独でも十分イベントとして行えますが、祭りの昼間の部分の出しものとしては、結構人気が高いものです。最近はあちこちで行われるようになりましたので、売り手の側も買い手の側も楽しみながら値引き交渉を行っているようです。似たような企画に「バザー」がありますが、品物を集めたり売ったりするのに運営する人手が必要です。祭りの一環として行うには、ちょっと手間が大変かもしれません。また、売れ残ったときの後始末なども手間を増やすものとなります。

「オリエンテーリング、スタンプラリー」
 公園や緑道沿い等が会場の場合、会場内や周辺をめぐるようなラリーを行うと、子供たちに喜ばれます。炎天下ですといっしょにいる親は大変ですが、子供たちは嬉々としてポイントを周っていきます。

「パレード」
 昔からの秋祭りであれば、みこしやだしが町内を練り歩くことになります。それに代わるようなものとして、酒樽を使った子供みこしや、仮装行列なども子供たちに喜ばれます。
 


【運営資金の調達と費用の見積もり】

 何かイベントをするためには、当然先だって必要になるものがお金。まずは、自治会や町内会の年間予算の中からということになりますが、そうそう多額の予算を毎年の行事で組むのも難しいことです。参加人数が500〜1000人を越えるような規模になると、内容にもよりますが費用も100万円を越えるものになってきます。そこでよく使われる手が、地域内の企業や商店、または住民の方に祭りへの寄付の形での資金援助をお願いすることです。祭りの会場内の大きなボードに掲載されている金額や名前は、資金面での協力をいただいていることのあかしです。地域の祭りとして定着してくれば、商店の経営者にも地域住民が多く含まれていますので、協力をお願いできる機会も増えてくるかと思います。

 それでは、いくらぐらいの費用がお祭りにかかるものでしょうか。内容によってピンからキリまでありますが、運営の人手のほとんどをボランティアでおぎなうとすれば、もっとも大きな割合を占めるのは、各種の設備や機材にかかる費用になります。年に一度の祭りのために、全ての必要な設備を購入するというのも非経済的ですので、多くの設備は祭りの期間だけのレンタルを利用することになります。このようなイベントのためのレンタル業者が市内にいくつかあり、ほとんどの必要なものをそろえることができます。

 設備の費用の一例を示します。

  ○テント・・・・・・・・一張り 10000円

  ○テーブル・・・・・・一台 1500円

  ○照明用ちょうちん・・一列 5000円

  ○綿菓子作り機械・・・一台 10000円

  ○盆踊り用のやぐら・・手間賃込〜数10万円

  ○電気配線・・・・・・手間賃 〜5万円
              配線機材を新規にそろえると10万以上さらに必要

  ○路上電柱より配線・・申請費用 〜5万円

  ○ステージ設備・・・・音響、照明 〜10万円(規模により差は大きい)

 だいたいの目安ですので、レンタル期間などによっても異なります。10軒のもぎ店だけをそろえるとしても、数10万程度の費用が必要となります。

 設備以外にも、もぎ店の材料仕入れにも費用がかかりますが、この分については売上であるていど回収することができます。
 

(その2へつづく)


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