都筑大介の競馬エンタテイメント小説

   すぐそこにある万馬券
 逆立ちカバさんのG1奮戦記2002


     

 横浜と川崎の市境にある丘陵地帯は、地元の人が「ひなたやま」と呼んでいるように、陽当たりのいい風光明媚な場所である。
 東京都心から程近いのに、柔らかな陽射しのもとにキャベツやブロッコリーが燦々と笑い輝く立派な田舎でもある。
そのひなたやまの、バス停から少し離れた住宅地の一角に一軒の小さな居酒屋があった。

 女将の立花泰子は五十代半ばの愛らしく品のいい婦人であり、落ち着いた雰囲気の中で誰もがくつろげるいい店なのだが、週末になると必ずその雰囲気をぶち壊す不埒な常連客がいる。
『ひなたやま四天王』を名乗る中年熟年の四人組、自称小説家のカバ(樺山次郎)、老舗豆腐屋四代目のハンペー(白壁凡平)、床屋の婿養子のツル(蔓野鶴雄)、そして元小学校長のタヌキ先生(讃岐金之助)の四人がその不埒者。

 四人とも、小遣いの工面に苦労している甲斐性足らずなのに無類の競馬好き。小銭を大枚に替えようと、無い知恵を絞って勝ち馬予想に没頭し、ああだこうだと大激論。それに貧乏学生トリオと独身サラリーマンたちが加わって大騒ぎ。それを女将の泰子は、いつも温かい眼差しで見守っている。この光景はいまや『ひなたやまの風物詩』になっていた。

 競馬狂いの中高年四人組が小さな居酒屋が舞台に繰りひろげる、人情味豊かな、お笑い競馬小説。





        目 次


プロローグ 居酒屋やすこ


一部 春眠、ああツキを覚えず      
 第1戦フェブラリーステークス 
 第2戦高松宮記念
 第3戦桜 花 賞
 第4戦皐 月 賞

 第5戦天 皇 賞(春)
 第6戦NHKマイルカップ
 第7戦オークス
 第8戦日本ダービー
 第9戦安田記念
 第10戦宝塚記念



第二部 天高く、外れ馬券舞う秋

 第11戦スプリンターズステークス
 第12戦秋 華 賞
 第13戦菊 花 賞
 第14戦天皇賞(秋)
 第15戦エリザベス女王杯
 第16戦マイルチャンピオンシップ
 第17戦ジャパンカップ
 第18戦阪神ジュベナイルフィリーズ
 第19戦朝日杯フューチュリティステークス
 第20戦有馬記念


エピローグ 新しい暖簾